■世界の児童労働者数1億5200万人 「2025年までにあらゆる形態の児童労働を終わらせる」

認定NPO法人ACE代表 岩附由香さん)

6月12日は「児童労働反対世界デー」でした。私たち認定NPO法人ACEは児童労働の問題に、団体として20年ほど取り組んでまいりました。「遊ぶ、学ぶ、笑う。そんなあたりまえを世界の子どもたちに。」をキャッチフレーズに、ガーナのカカオ産業、インドのコットン産業で、実際にコミュニティベースの支援を行い、1,884人の子どもを児童労働から救い、約13,000人の子どもの教育環境を改善してきました(2018年4月時点)。一方で、児童労働の問題は日本の私たちの生活にも繋がっているんだということも伝えてきました。

昨年から新たなパーパス(存在意義)「私たちは、子ども、若者が自らの意思で人生と社会を築くことが出来る世界をつくるため、子ども、若者の権利を奪う社会問題を解決します」を掲げています。新しいパーパスを作った背景に、「持続可能な開発目標(SDGs)」があります。これは、世界を持続可能な形に変革するための世界共通のゴール(目標)で、「誰も取り残さない」という包括性、「途上国も、先進国も」という普遍性が原則となっています。これまであった「ミレニアム開発目標」は途上国の目標という位置付けだったのですが、このSDGsは全ての国が目指すべき目標となりました。児童労働に関しては、SDGs全17の目標の中で「SDG8.7」に「2025年までにあらゆる形態の児童労働を終わらせる」という目標が掲げられています。日本の児童労働は誰が撤廃するのだろうと考えた時に、私たちの新たな役割に気づき、日本の児童労働の調査をさせていただいています。

認定NPO法人ACE代表 岩附由香さん

児童労働は国際労働機関(ILO)の2つの条約で禁止されており、世界共通の概念になっています。1つ目が「就業の最低年齢に関する条約(ILO第138号)」で、働いてもよい年齢を「義務教育を終えてからの原則15歳」と定めています。2つ目が「最悪の形態の児童労働に関する条約(ILO第182号)」で、①人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働、②売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、斡旋、提供、③薬物の生産・取引など不正な活動に使用、斡旋、提供、④児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働は、最も早く無くさなければならないものだと定めています。日本もこの2つの条約に批准しています。(出典:http://www.ilo.org/tokyo/areas-of-work/WCMS_239915/lang–ja/index.htm

©︎認定NPO法人ACE

ILOが4年ごとに出している国際的な推計によると、2016年時点で世界で就労している子どもは2億6,400万人でした。そのうち、私たちが問題視している児童労働は1億5,200万人、その中の危険・有害な労働が7,300万人でした(出典:http://www.ilo.org/tokyo/areas-of-work/child-labour/lang–ja/index.htm)。児童労働の「児童」が何歳を指すのかということなのですが、「国連子どもの権利条約」では、世界共通の子どもの概念を「18歳未満」ということで定義しています。児童労働の線引きは、15歳未満は義務教育年齢で就労すること自体が基本的には禁じられています(新聞配達等の軽い労働については許可制)。また、16歳以上で働いてもよい年齢だけれども最悪の形態の労働、あるいは危険有害な労働に就いている子どもたちを児童労働と考えています。

世界の傾向を見ると、児童労働数は年々減少していますが、ここ4年間で減るスピードが落ちてきているという現状があります。児童労働が起きる理由についてですが、例えば、私たちが活動しているインド南部のコットン畑は、遺伝子組み換えハイブリッドの種子を栽培している地域で、女の子が主に雇われており、児童労働も増えています。その背景には、ビジネスとしてこの新しい遺伝子組み換えの種を栽培する人が増え、それによって手で一つ一つ人工授粉させなくてはならないという作業が生まれ、集中的に安い労働力を必要となったことです。人為的な労働市場の需要の変化に、たまたまこの地域の供給要因が重なりました。その供給要因は、女の子に対する教育の関心が低く、教育環境が整っていないということです。「どうせお嫁に行ってしまうのだから」とか、あるいは「ダウリー制度(結婚時に花嫁の家族から花婿及び花婿の家族に対してされる支払いのこと)」があり女の子は15歳くらいから「私の持参品どうなるのかしら」と心配します。そういう気持ちに漬け込んで子どもたちを雇うような状況が生まれています。また、この地域が農閑期になると親に収入がなくなるなど、収入が不安定ということも要因の一つです。さらに、児童労働の影響はこの世代だけではなくて、次の世代にも影響します。色々な活動地でインタビューすると、「若い頃に働き続けると40代で体に限界がきてしまい、自分の子どもを働かせてしまう」と。貧困の悪循環でどんどんと繋がってしまっているという現状がありました。

©︎認定NPO法人ACE

■未だ未知数な日本の児童労働者数

認定NPO法人ACEアドボカシーオフィサー 太田まさこさん)

私からは、日本における児童労働の状況調査の中間報告をさせていただきます。日本の児童労働の定義は、労働基準法で15歳が就労最低年齢、18歳未満が危険有害な労働が禁止だと定められています(出典:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-3/hor1-3-35-6-0.htm)。中学生に関しては軽易な労働は許可があればできるということになっています。13歳以下はその軽易な労働も禁止なのですが、子役やタレントは特別な許可があって活動できるということになっています。その他、将棋の棋士のような個人事業主は、労働者とはみなされず、労働基準法の適用範囲外となっています。

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日本での児童労働者数ですが、年少者に関する労働基準法違反が2015年には297事業者で確認されました(出典:http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/kantoku01/dl/27.pdf)。また、福祉犯(子どもの心身に有害な影響を与え、子どもの福祉を害する犯罪)の被害者(20歳未満)は、2015年で6,235人となっています(出典:http://www2.shakyo.or.jp/zenminjiren/pdf/topics/H27kenkyo_kensu.pdf)。これは明らかに危険有害な労働や禁止された労働に関わっていたものの数であると考えられます。しかし、児童労働に関するデータをまとめようとしても、項目が違っていたり、統計の取り方が18歳未満ではなく20歳未満であったり、単位が事業者数や人であったりということで、単純に数字を積み上げることができませんでした。ILOが2017年に初めて高所得国における児童労働者(5歳から17歳)の割合を発表し、児童労働者の割合が全体の1.2%、危険有害労働の割合が1.0%でした(出典:http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—dgreports/—dcomm/documents/publication/wcms_575499.pdf)。これを、もし日本の5歳から17歳の子ども人口1450万6,387人(出典:平成27年度国勢調査https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&tstat=000001080615&cycle=0&tclass1=000001089055&tclass2=000001089056&stat_infid=000031473213&second2=1)にかけると、児童労働者数が約17万4,000人、そのうち危険有害労働に従事しているのが約14万5,000人となります。しかしこれはあくまでも試算で、実際のところ、人数はまだ分かっていません。

認定NPO法人ACEアドボカシーオフィサー 太田まさこさん

ここで、日本の児童労働の実態として、NPO法人ライトハウス事務局長・坂本新さんから人身取引の事例を、首都圏青年ユニオン執行委員長・原田仁希さんからブラックバイトの事例を、琉球大学教授・上間陽子さんから特定の地域における児童労働の形についての事例をお話いただきます。

■形を変えて残り続ける日本での「人身取引」という搾取の形態

NPO法人ライトハウス事務局長 坂本新さん)

特定非営利活動法人「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」は、主に日本国内における人身取引被害者の支援と、啓発教育、そして法制化も含めた政策提言を行っています。「性的搾取」「強制労働」「臓器摘出」の3つが人身取引を構成する主たるものとなります。その中でライトハウスは「性的搾取」の支援に特化した活動を行っております。

日本では起きている人身取引は、大きく5つあります。ここ数年で増えているのが、「AVをはじめとするポルノ等への出演強要被害」です。また、「児童ポルノ」、「売春強要」、「リベンジポルノ」、「児童買春」などがあります。2017年の1年間に当会へ新規相談があった中で、人身取引が疑われる事案は138名。そのうちAV出演強要が88名、児童ポルノが11名、売春強要が11名、その他が36名でした。ライトハウスでは、電話、LINE、メール、当会で開発した独自のアプリの4つの相談窓口を持ち、被害当事者からの相談、または周りにいる方からの相談を受けています。児童からの相談は圧倒的にLINEが多くなっています。そこで繋がった方への支援としては、まずは本人との直接の面談をして主訴の確定をした後、困りごとの解決に最適な社会資源に繋げます。例えば、法律相談であれば法律事務所に繋げる、もしくは警察に繋げる、病院に行く、その他行政窓口で様々な手続きのお手伝いをするなど、多岐に渡っています。時には、加害者側との代理交渉ということで、例えば、風俗やAV出演をやめさせてもらえないという場合は、本人に代わってスタッフが本人に代わって交渉することもあります。

NPO法人ライトハウス事務局長 坂本新さん

日本で起きている人身取引について、いくつかの事例をお話しします。

「AVをはじめとするポルノ等への出演強要被害」
これは多くのケースがありますが、特に代表的なケースを簡単に説明します。まず、入口が2つあります。1つが街頭での直接的なスカウト、もう1つがウェブサイトでの求人広告または虚偽の広告です。1つ目の場合、少し前まではスカウトがしつこく付きまとってその足でAVの事務所まで連れていかれることが多かったのですが、現在は多くの自治体の取り組みが功を奏し、付きまといまではなくなりました。しかし、短い時間の中で連絡先を交換し、後々時間をかけて本人に接触するということが起きています。何れにしても、入り口としては「AV」という話は一切出ず、例えば、「芸能人に興味ありませんか?」「アイドルになりませんか?」「モデルをやりませんか?」という言葉でまず近づいてきます。次第に、巧みにAVプロダクションに誘導され、ここで非常に巧妙かつ執拗な説得が行われることになります。例えば、「うちはAVもやっているけれど、それはやりたい人がやればいいだけで、仕事は選ぶことができる。嫌な仕事はやらなくてもいいし、男の人に触られる仕事は一切ない。それはあなたの自由です。だから今日は登録だけしておいてください」と契約書が渡されます。10代前半の社会経験のない相手なので、加害者側から見ると最も簡単に誘導できる仕組みになっています。ここで契約書にサインをしてしまうと、後日「AVの仕事が決まった」と連絡があり、「出るつもりもないし、出ないと言いましたよね?」と伝えると、契約書をちらつかされます。「この契約書で、撮影が本人の都合で中止になった場合はそのキャンセル料を本人が負担することになっている。これから現場を荒らすことになると200万〜300万というキャンセル料がかかることになるが、それを払うことができるのか?」と追い詰められ、泣く泣く撮影に応じざるを得ないという状況になってしまいます。しかし、一旦AVに出演し販売されてしまうと、DHSの時代と違って今は全てネット上での配信が行われるので、性的な映像の完全な抹消は非常に困難になってしまいますし、誰でもパソコンやスマホから閲覧可能な状態になってしまいます。その結果として、学校や会社にバレてしまい、退学になる人もいますし、仕事を失う人もいます。本人には働く意思があっても、就職活動の最中にAV出演がバレると仕事に就くことも困難になり、後々まで本人に不利益が響くこともあります。

これはよく「成人女性だけの問題じゃないの」と言われることもありますが、実際に昨年大阪府警が摘発した件で、「Moe Moe Style」というホームページ(現在閉鎖中)で、主に高校生を相手にリクルートをしていたものがありました。18歳未満の子どもに対して「AV」という言葉は一切使わずに、「コスプレのモデルをしたらアルバイト代を払います」とリクルートしていました。皆さん安心して応募をしてくるわけですが、先ほどの流れのように契約書にサインをさせられて、本人はコスプレの撮影かと思ったら、実際には本番の行為まで要求され、契約書を出されて断れずに応じざるを得なくなるという状況に。警察が摘発した時に約200人の契約書が押収され、そのほとんどが18歳未満だったと言われています。当会へのAV被害についての相談も、2012年、2013年には1件だったのが、2014年には36件、2015年には62件、2016年には100件、2017年も99件と増えてきているのが現状です。

©︎NPO法人ライトハウス

「売春強要」
今回は、特に若い被害者の事例を紹介します。12歳の子どものケースなのですが、育児放棄されて戸籍上は父親がおらず、母親は公益組織暴力団の構成員ということで、昔から施設で育っているという状況でした。その施設も事情があって出てしまい仕事を探す中で、見つけたのが風俗だったということで逃げ、別の都市で斡旋された仕事も風俗だったので逃げ、そうこうしているうちに反社会的組織の人間から追われることになりました。危険を感じて児童相談所に相談し、そこから当会に繋がったという事例です。これは実際に当会が介入して本人の保護まで至ったのですが、こうした支援に繋がれる子どもはおそらく一部で、実際には水面下にはもっと多くの被害があると考えています。

「児童ポルノ」
一昨年から相談が徐々に増えている状況です。特に多いのがSNS。典型的な例を紹介すると、Twitterで仲良くなった方に、言葉巧みに誘導されて性的な写真を送ってしまうということがありました。写真を送信した後、加害者が被害者の名前でSNSのアカウントを開設し、「もっと過激な写真が欲しければいくらで売ります」というメッセージで発信されてしまい、本人も誰にも相談できず、ネットで相談先を探す中で当会に辿り着いたという事案です。本人と話をして、当会から保護者に説明を行い、三者で警察に行き、最終的に犯人が捕まったという形になります。

「JKビジネス」
児童買春の温床となっていると言われているものです。2017年から東京都で規制が始まり、どのような形になったのか、2017年の7月に客を装って秋葉原の方へ調査に行きました。物の見事に、制服を着たJKの姿は消えておりました。全員がメイド服やアメリカンポリスのようなコスプレをして、「ガールズカフェ」という、いわゆる「1時間〇〇円でジュースとお菓子を食べながらお話ができます」というシステムで行っていました。そこで働いている女子高生20人ほどと話をしたところ、ほとんどの子が「特に困っていることはない」という回答でした。しかし、その日の調査で唯一「お散歩しませんか」と言ってきた子に色々聞いていくと、お散歩中に体に触れる、性行為を行うなどの「裏オプション」と呼ばれるものが存在しており、それをしないとお金にならないということでした。もし1人もお客さんを取れなかった場合は、その日の収入はゼロ。形を変えて搾取の形態が残っているというのが現状です。

また、その他、「虐待や育児放棄が理由で家にいられない」、「親が離婚してお母さんと一緒に住んでいるけれど、母親の新しい恋人から性暴力を振るわれる」など、様々な理由で家にいられない子どもが外に出ざるを得なくなります。その過程で、管理売春に取り込まれる危険が非常に高いということを、現場を通して感じています。

■弱い立場につけ込む高校生・大学生のブラックバイト 解決には格差・貧困の是正を

首都圏青年ユニオン執行委員長 原田仁希さん)

「首都圏青年ユニオン」は、若者の労働組合として活動しています。主には、労働問題を抱える若者の支援として、労働組合の権利(団体交渉権や団体行動権)を積極的に使って労働問題を解決しています。年間300件ほど労働相談が寄せられるのですが、ほとんどが労働基準法違反で、違法な働かせ方をしているというのが実態です。2015年頃に「ブラックバイト問題」が社会化・可視化されるようになった際、「ブラックバイト」の定義は「学生であることを尊重しないアルバイト」とされていました。しかし今では、広い意味で「法律が守られていないアルバイト職場」のことを「ブラックバイト」と言われるようになりました。いくつかの事例を紹介します。

首都圏青年ユニオン執行委員長 原田仁希さん

ブラックバイトの事例1「高校生だから」
求人で見ると時給が1,000円だったのが、実際に働いてみると時給が950円に。「時給1,000円だったと思うんですけど」と聞くと、「あなたは高校生だから」と。高校生だというだけで著しく待遇が低くなる、完全に安く使われるということが、アルバイトの始まりからあります。

ブラックバイトの事例2「辞められない」
まず、人手不足で辞められないということがあります。「そろそろやめたいのですが」と伝えると「人手が足りていないからやめないでくれ」と言われ、「それでもやめないといけない」というと「契約期間中だ。今やめたら損害賠償するよ」と言われ辞められないということが。辞めることによって損害賠償が生じることはほとんどないにも関わらず「損害賠償する」と脅されるケースです。また、「『給料取りに来い』と言われた」という相談もあります。バイトを辞められないから行かなくなってしまうと、「最後の月の給料は取りに来ないと渡さない」と言われたということです。これは給料未払いで、完全に法律違反です。また、正社員が長時間の過密労働をしているということで辞められないケースもあります。実は僕自身も大学時代にブラックバイトをしていたことがあるのですが、正社員の人がかなり過密でシフトも連続で入っていてすごく忙しいということを学生のバイトは見ているのです。すると、「正社員がかわいそうだ、自分が入らないといけない」という思いに駆られて辞められず、ズルズルと働いてしまって、勉強する時間も削がれてしまうということが相談として多いです。

ブラックバイトの事例3「深夜労働」
これは高校生の事案が多いのですが、18歳未満の深夜労働は法律で禁止されています。シフト上は夜10時まででも、10時になるとタイムカードを押してと言われる、もしくは勝手に押されるというケースが。その後に残業をさせられ、残業代は未払いで、しかも記録としては法律違反していないように見せかけるという手法です。

ブラックバイトの事例4「戦力化」
これは有名カフェチェーンのある出来事なのですが、ほぼ学生バイトで店舗運営をしていて、ほぼ店長もいないというところがありました。店長は何店舗も掛け持ちしている状態で、「店長がいない間は時間帯責任者ですよ」と言われ、アルバイトが商品の発注のような店長が行う業務をしないといけないと。また、お客様からクレームがあったら店として責任を取って謝罪をさせられたということもありました。また、そこで雇い止めの相談があったのですが、会社側との交渉で最終的に出てきた会社の言い分が「カフェなので、女性は鮮度が大事。だから定期的に変えなければならない。だから辞めてもらう」という内容でした。典型的なブラックバイトだと思います。

ブラックバイトの事例5「損害賠償」
これは家庭教師のアルバイトのケースですが、家庭教師先で遅刻するということが何度かあり、それで契約が切れてしまったということで、「切れた契約分が60万円あるので、それはあなたの責任で支払ってください」という法外な損害賠償を請求されたということがありました。また、コンビニバイトの大学生が1人で店舗を回しており、あまりにも手が足りないということで30分店を閉めて品物を整えた時に、それによってお客さんが入れなくなったということ、またレジ金が足らないということで、100万円以上の損害賠償を請求されるということがありました。交渉の時に、「損害賠償するのであれば内訳を示してください」と言うと、内訳は示さない。「損害賠償の根拠は具体的に何ですか」と言うと漠然とした回答だけで「こういうことでいくら損害があった」とは言ってくれないということもありました。立場の弱い人にちょっとミスがあったら、ざっと漬け込む。確かにミスがあると「これ払わなければいけないのかな」と思わされる。また、「自爆営業」もあります。学生バイトにも関わらず、恵方巻きやクリスマスケーキのノルマを課せられて、「売れなければ買い取ってください」と。これは日常茶飯事です。

ブラックバイトが起きる背景には、非正規労働者の増大があります。全労働者の約4割が非正規になっています(出典:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000120286.pdf)。労働市場が底抜けし、かなり低賃金化して低い層の労働者がかなり増え、格差と貧困が広がっています。また、最低賃金層の労働者も今かなり増大しています。都留流分科大学の後藤道夫教授が試算を出しているのですが、2001年と2015年の比較で、最低賃金額以下で働いている人は1.8%から4.1%まで増えています。最低賃金の1割増しも4.2%から10.1%に。2割増しは8.1%から17.4%に。3割り増しは12.4%から24.0%となっています。そうすると、学生バイトの時給とあまり変わらなくなります。

©︎首都圏青年ユニオン

変わらないので、学生であるということを配慮されずに安く使われているのです。「そのユニフォームを着たらお店の代表です。お客さんに対してはお店の代表なのだから、高校生や大学生としてではなく、労働者、働くスタッフとして意識を持ってください」と言われます。安くは使われるのですが、求められるのは普通の労働者と同じ。

また、家庭の貧困も原因の1つです。大学生の仕送り額が減っています(出典:http://tfpu.or.jp/wp-content/uploads/2018/04/2017kakei-hutan-chousa20180404.pdf)。大学生も多くがアルバイトをしていますし、高校生も同じです。高校生に「なぜアルバイトをしているのか」と聞くと、「大学に行くための学費を稼がないといけない」、「家に多少お金を入れないといけない」、「家にお金ないから自分で遊ぶお金は自分で稼がないといけない」と話します。子どもの貧困は家庭の貧困であり、労働市場の低賃金化によってかなり連関していくのかなと思っています。

©︎首都圏青年ユニオン

もう1点、奨学金の問題もあります。何百万もの奨学金の返済を抱えざるを得ず、社会に出た時に借金を抱えるマイナスからのスタートになってしまうのです。そこから何年も学費を返済しなければなりません。そうしたことから、大学の学費を稼ぐためにアルバイトする高校生が急増していると考えています。

やはり、ブラックバイトの問題の根本的解決には日本社会の格差や貧困の是正が必要です。労働問題を中心に低賃金層が増えたり、非正規が増大したりということが背景に格差・貧困が広がって、家庭の貧困にも繋がりますし、高校生がアルバイトに出ざるを得ないという状況になる。しかも、そこで違法な働かせ方が蔓延してしまう。立場が弱いのでそこにつけ込む使用者が出てくるという関係になっていると考えています。

■沖縄で見た児童労働の実態 「14歳や15歳から働いていた」

琉球大学教授 上間陽子さん)

今沖縄で2つの調査をしています。1つが沖縄県の風俗業界で働く女性、もう1つが若年出産女性の調査です。現段階で、風俗業界の18名の男女、若年出産の女性48名にお話を伺っています。1つ目の調査で分かってきたことは、風俗業界で働いている方々の働き始めた年齢が低いということです。全員が18歳未満の時から働いているということでした。若年出産女性の調査では、「子どもを10代で産んだ若い女性たちに話を聞く」というのが調査設定の入り口だったのですが、始めてみたら10代の子たちの8割は風俗業界では働いているという状況でした。こちらもスタートの年齢が早く、14歳や15歳から働いていたという方が多いのが特徴でした。なぜこうして働いているのかと聞いてみると、「豊かになってお金を儲けることで、お洋服を買ったりお化粧品を買ったり友達を遊びに行ったり飲みに行ったりしたかった」、「居場所が欲しかった」という話をします。「居場所が欲しかった問題」や「何らかのアイデンティティが欲しかった問題」を深掘りしてみると、育ってきた家庭が大変厳しいというケースが多いことも分かりました。子どもの育ちというのは「家族」と「学校」と「地域」という3箇所で営まれるものなのですが、この中で最も力が強くなっており影響力が大きいのが「家族」です。しかし、家族が弱い子どもは学校に繋ぎとめられるのも難しく、地域という場所に繋ぎとめられるのも難しいという状況になります。家族が弱い子どもは色んなところで脆弱になっているということです。そういう子が早期に学校から離れたり、学校に足が向かなかったりという時に、風俗業界がそこにあってアクセスしてしまう。

琉球大学教授 上間陽子さん

でも、中学生で働いてもずっと継続的に働いているわけではありません。その後に家族形成する子もいますし、一旦他のところに行くなどして離れる子も。しかし調査をしていくと、やはりまた困難があるときに風俗業界に戻ってしまうということがありました。それは、まとまったお金が必要な時です。例えば、運転免許に関してもそれを取るためには20数万かかります。車を買わないといけない時も、中古を買ったとしても保険などを含めると20万はかかります。そういうまとまったお金が必要になった時に、「それを稼げるのは以前働いていた業界だ」と戻ってきてしまう。一見自分の選択のように見えるかもしれませんが、選択肢が非常に限られた中で行ってしまう、選んでしまうという状況があります。これを変えていくためには選択肢を豊かに作るとか、まとまったお金が必要になった時の支援を増やすしかありません。

また、調査をやっていて深刻だと思ったのが、風俗業界では若い子が性的に慣れていないということです。よって、性的な被害に遭っている子が多いです。性被害を抱えても、若年で自分の困難を口にするというのは非常に難しいし、自分について語る言葉を十分に持てていない中で働くことで、被害について語れない、被害を被害化できないという状況が起きています。

もう1つ強調しておきたいのは、家族に任せておいたらいいという状況ではないということです。調査をしていると、家族という場所が徹底的に弱くなっていて、弱い家族に育てられた子どもたちが剥き身のままにさせられているという状況がありますので、具体的にどう子どもの育つ場所を補強できるかということを考えていかなければならないと考えています。

■日本での児童労働をなくすため、私ができることは?

認定NPO法人ACEアドボカシーオフィサー 太田まさこさん)

危険有害な労働への包括的な対応は現在あるのでしょうか?実は、JKビジネスに関わっている少女たちは、保護ではなくて補導されています。深夜外出、JKビジネス店への出入り、路上で制服を着て「JKお散歩」を勧誘するなど、これらの全てが補導の対象となっています。また、「サイバー補導(インターネット上で援助交際や下着の販売を持ちかけている子どもへの補導)」も行われています。保護やケア、リハビリテーションが不足しているのではないかということを指摘させていただきます。

また、私たちは児童労働に陥るリスクの高く、配慮が必要な子どもたちがいるのではないかと考えました。家庭的な背景をみると、虐待、ネグレクト、貧困、また一人親家庭では特に母子家庭は難しい問題を抱えています。学校での状況を見ると、いじめがあったり、校則が厳しかったり、学校の成績が良くなかったり、友達や先生との関係に問題があったり。こうした問題から、不登校、長期欠席、中途退学、自傷行為、引きこもりが起こったり、疎外感・孤独感・低い自己肯定感を持ってしまったりということが出てきていると考えられます。現在顕著になっている子どもに関する課題と児童労働の要因には強いつながりがあるのではないかと思っています。まだ中間報告ですので、これから第2段階で深く見ていかなければなりません。

認定NPO法人ACE代表 岩附由香さん)

2017年12月14日に、古河市下大野の中央鋼材古河工場で太陽光パネルの清掃作業中に天窓から転落し、15歳のアルバイトの女性が死亡したという事件が起き、我々は緊急声明(出典:http://acejapan.org/info/2017/12/20041)を出させていただきました。「国連子どもの権利条約」の中には、どの国に生まれても平等に「生まれながら」にして権利(生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利など)を持つことが規定されています。そして、その権利を満たすのは大人だということも規定されていますから、私たちがこの問題に対してどうしていくのかを考え、解決していく責任があるのかなと思います。

また、日本の児童労働を、「子どもの権利」という観点だけではなく、「日本のビジネス」という観点からも問題になっていく可能性があります。実は諸外国では児童労働や強制労働によるものを使わない、あるいは企業のサプライチェーン(供給連鎖)にそういった児童労働や強制労働がないかどうかの確認を求める法律がどんどんとできてきています。その中で、日本企業もサプライヤー(供給者)として「あなたのサプライチェーンは大丈夫ですか?」ということが、中小企業さんも含め今問われています。そんな中、私たちが無関心でいると、実は日本企業の国際競争に影響してくる可能性のある問題でもあるのです。今日本国内でも「ビジネスと人権に関する指導原則の国別行動計画」(出典:https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_001608.html)の査定をしようという動きが出てきていますが、こういった世界の英国の現代奴隷法などに倣うような法律を日本でも作ることが、今求められていることではないかなと考えております。

児童労働にNo! レッドカードアクション ©︎認定NPO法人ACE

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