地域

伝統の「下津井わかめ」を甦らせたい。瀬戸内の海産物問屋、廃業からの挑戦

下津井わかめ

瀬戸内海の港町として栄えた岡山県倉敷市の下津井で、40年前に消え去ってしまった「下津井わかめ」を再び名産にしようという計画が進んでいます。チャレンジしているのは、地元の海産物問屋・吉又商店の代表・余傳吉恵(よでんよしえ)さん。下津井わかめを広めることで、地域の活性化もしていこうとクラウドファンディングにも挑戦中です。

下津井は北前船の寄港地として江戸時代から栄えていた港町です。かつては、豊かな瀬戸内の海の恵みで暮らしていましたが、高度成長期に工業化が進むにつれ漁獲量は大幅に減少しました。その減少を補うために、環境の変化に強いわかめの養殖を手がけるようになりました。それが「下津井わかめ」です。

通常のわかめは、水揚げするとすぐにお湯で茹でる湯通しをするのが一般的です。お湯に通すことで、わかめの硬い部分をやわらかくして加工しやすくし、色の変化も防ぎます。しかし、湯通しをするとせっかくわかめに含まれている海水のミネラル分もお湯にとけ出してしまいます。

「下津井わかめ」はもともと薄く、十分やわらかさがあるため、湯通しはしていません。昔ながらの手法である「素干し」という天日干しにこだわり、海水のミネラル分をたっぷりと含んだ状態で出荷しています。ひとつひとつのわかめを広げて、天日干しをするので手間がかかり、量産はできませんが、余傅さんは「伝統製法へのこだわりが下津井わかめのブランド力を高めることになる」と考えているそうです。

余傅さんが子どものころ、下津井わかめは安い外国産との価格競争などのせいで衰退してしまい、吉又商店もいったんは廃業せざるを得ませんでした。大人になった余傅さんは小学校の教員として長年働いていましたが、2011年に早期退職した後、地元への思いが強くなり、「日本の他の場所にはない、下津井だけの名産をこのまま終わらせてはいけない」と考えるようになったそうです。地元の漁師の力を借りて、下津井わかめの復興に乗り出しました。

余傅さんは今回のクラウドファンディングを通じて、地元のことを全国の人たちに知ってもらいたいと考えています。

「私のふるさとでもある下津井は、瀬戸内の豊かな自然と人情にあふれたすばらしい町です。しかし、高齢化が進み、町からはかつてのような活気が失われてしまいました。このままでは限界集落になりかねません。地場産業の再興と下津井の観光資源の発掘・活用を通じて現代人が忘れかけたホッとできる故郷の味を全国の皆さんに発信していきたいと思います。下津井わかめだけでなく、児島のデニムともコラボして、『ものづくり・児島』『歴史と人情の町・下津井』を全国の皆さんに知っていただき、地元の人と下津井を訪れた方が、共にホッとでき、心豊かになれるような観光地にすることを目指しています」

クラウドファンディングによる支援の受け付けは5/31までです。支援者へのリターン(返礼品)は、下津井わかめのふりかけなどが用意されています。詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/shimotuiwakame/ をご覧ください。

下津井わかめ

A-port 朝日新聞社

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