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昭和の文化を令和へ。現役88歳、「最後のプロ街頭紙芝居師」の挑戦。

街頭紙芝居

「街頭紙芝居」をご存じでしょうか? 公園や広場で駄菓子を売り、子どもたちが集まってきたところで紙芝居を上演するというもので、かつては娯楽の王様でした。

今ではほとんど見かけることはなくなってしまいましたが、大阪の杉浦貞さんは「現役最後のプロ街頭紙芝居師」といわれ、88歳になった現在も活動を続けています。この杉浦さんの姿を映像に残すとともに、「最後の新作紙芝居」を制作するために、クラウドファンディングが行われています。

「街頭紙芝居」は1930(昭和5)年に誕生しました。最盛期の1950年代には、全国に数万人の街頭紙芝居師がいたといいます。子どもたちに悪影響を与えるような人物を排除するため、街頭で紙芝居を上演するには、都道府県の「紙しばい業者免許証」を取得しなければならないほどでした。

しかし、テレビやマンガの普及などによって、その後、街頭紙芝居は急速に衰退します。公園などで紙芝居をしていた「おっちゃん」たちも多くが廃業していきました。

1984年には街頭紙芝居の免許制度が廃止になります。それまで免許を持っていれば自由だった公園での上演に営業許可が必要となり、街頭紙芝居という文化はこのまま消滅してしまうかに見えました。

しかし、全国にわずかではありましたが、街頭紙芝居に人生を賭けた人たちがいました。杉浦貞さんもその一人です。今年5月で88歳になりましたが、今も子どもたちが待つ公園に出向き、上演の前後に駄菓子を販売し、その売り上げで生計を立てています。多くの街頭紙芝居師が高齢などの理由で引退していったため、今では「現役最後のプロ街頭紙芝居師」となっています。

今回のクラウドファンディングを立ち上げたのは、放送作家で紙芝居作家でもある、桑原尚志さんです。桑原さんは約35年にわたって、杉浦さんの紙芝居の原作を手がけてきました。

その桑原さんに杉浦さんから「人生最後の新作紙芝居の制作資金が不足している」と相談がきました。桑原さんによると、街頭紙芝居の絵は独特の技法を習得したプロの絵師に発注するため、1枚数万円の制作費がかかるそうです。

「ここで何かアクションを起こさなければ、奇跡的に生き残っている最後の街頭紙芝居師の存在も世間に忘れ去られたままになってしまう。昭和の子どもたちを夢中にさせた街頭紙芝居の楽しさを令和の子どもたちに伝えることも出来ない」

そう考えた桑原さんは、杉浦さんにクラウドファンディングを提案しました。東日本大震災の翌2012年、杉浦さんが被災地でボランティア巡業をしたときにVTRを制作して寄付を募ったことがあり、その経験も桑原さんを後押ししました。

今回のクラウドファンディングでは、新作紙芝居の制作とともに、杉浦さんの名人芸を後世に伝えるために、紙芝居の上演映像も制作する予定です。

「子どもたちと顔と顔を合わせ、生の声で、正義や夢、生きることを伝えてきた杉浦さんの、人生をかけた任務と、その生き方を映像に残したい。今回のクラウドファンディングではその制作費を募り、合わせて杉浦さんが『これを完成させないと、死んでも死に切れない』という最後の新作を無事、世に送り出したい」

桑原さんはクラウドファンディングのページで、こんな思いを記しています。
支援の受け付けは6/13までです。詳しくはこちらをご覧ください。

A-port 朝日新聞社

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