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(日本語) 自らの体験を誰かのために。阪神・淡路大震災から25年、被災者の証言集出版へ

よろず相談室がクラウドファンディング

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阪神淡路大震災から25年経った今年、被災した人達による「証言集」を出版しようとNPO法人「よろず相談室」がクラウドファンディングに取り組んでいます。

未曽有の災害を経験した人達による取り組みや、日本全国の人達に対してどんな想いが込められているのかを、私の目線で紹介させていただきます。(フリーアナウンサー 松本有加)

松本有加さん
まつもと・ゆか 神戸市須磨区出身。東京在住のフリーアナウンサー。 阪神淡路大震災で被災したことにより、ボランティアとして活動に携わる。

■心の声に寄り添うこと

私が「NPO法人よろず相談室」の活動に携わったのは阪神淡路大震災から14年がたった2009年。

私自身も阪神淡路大震災で家が全壊し、同級生や知人を失いました。

震災当時、誰かを助けることもできなかったはがゆさから「今、自分にできることがしたい」。

そう思っていた頃、テレビのインタビューに答えていた牧秀一先生(70)の言葉が胸に刺さったからです。

「被災者の心の声に寄り添う人が必要なんです」

牧秀一先生は、阪神淡路大震災直後「よろず相談室」という団体を数人のボランティアとともに立ち上げ、それからずっと被災した人達の気持ちに寄り添い続けています。

主な活動内容のひとつは、毎週日曜日にHAT神戸などの震災復興住宅への訪問活動。目的は、一人暮らしのお年寄りの健康状況などを聴き取り、会話をすることで孤独死を防ぐため、また当事者の人達による交流の場をもつためです。

もうひとつの活動として、月に一度、震災で重い障碍を負った人達による「集い」を開催。震災当時0歳児だった女性からお年寄りまで、当事者とその家族が集まり、気持ちを共有する場を設けていました。

目的は、何よりも当事者の人達へ『一人ではない。置き去りにされていない』と伝えること。そこから少しでも前向きに生きて欲しいとの思いで活動をしていたといいます。

牧秀一さん
20年来の付き合いがある被災者と話し込む牧秀一さん=朝日新聞社撮影

 

■「当事者」から「支援する立場」に

参加して特に印象深かったのは、震災で障碍を負った人達による「集い」です。

集いに参加されている人達はとても明るく前向きで心優しく、会えるのが楽しみになるほどでした。

9年前、東日本大震災直後に開かれた集いでのことです。

亡くなった人達だけでなく、「けがを負った人達」のその後の生活や心境を想う声が当事者の人達の間で次々あがりました。

いずれも震災当時生き埋めになったところを助け出され、足に重い障がいを負った岡田一男さん、甲斐研太郎さん、植村喜美子さんを筆頭に、当時60、70代だった当事者の人達が居てもたってもいられず「東北へ行こう!!」とその場で東北への慰問が決まりました。足の障がいや高齢であることをよそに、牧先生と数人のボランティアとともに福島や宮城の被災地へ。

被害にあった南三陸町を見る牧さん
高台から流された街を見る牧さん(左)ら=2011年4月16日、宮城県南三陸町

 

また、ハイチで地震があった際も、「負傷した人」のその後の生活をみんなで話し合い気遣っていたほか、中国四川省で地震により足に障がいを負った高校生が来日した際には励ましの言葉を贈るなど、「心や身体に傷を負った人達」の存在をいつも大切に思われています。

東北への慰問のほかに自身の経験から、同じ苦しみを誰かにさせまいと、岡田さんや甲斐さん、植村さんを含め当事者の人達は、「自然災害への備えの大切さ」を社会へ訴えるようになりました。

阪神・淡路大震災直後、障害者手帳の申請に使う診断書の原因欄に「自然災害」の項目がなかったため、当事者の人たちは周りから理解が得られず苦労したといいます。

今後の備えとして項目の追加を神戸市や国に訴え、神戸市では2012年に全国で初めて診断書の様式の改正が行われ、2017年3月に国でも、正式に様式の改正の通知が都道府県などに行われました。

備えの大切さは制度改正運動にとどまらず、自らの言葉で発信しています。

神戸の被災者への訪問活動も岡田さんや甲斐さん、植村さん自ら行い、毎年夏に開催する琴平高校(香川県)の学生達との交流会では、自身の被災体験から防災の大切さを語る講演も行われました。

いつの間にかみなさんは、「当事者」でありながら「支援する立場・災害への備えの大切さを訴える存在」へと変わっていきました。

被災者の方々
阪神・淡路大震災で被災した当事者の方々と牧さん(後列中央)

 

■自らの体験を誰かのために

今回、よろず相談室では、岡田さんや甲斐さん、植村さん含め、これまでボランティアメンバーが接した数百人の中から22人の当事者の人達の姿を5年前から動画撮影し、その25年の思いを「証言集」として出版しようとしています。今後、行政、地域、個人の備えとして、多くの人達の役に立つことでしょう。

時に阪神淡路大震災という出来事を、神戸にとって負の遺産のように言う人もいます。

しかし、災害で自分自身がつらい経験をしたからこそ、誰かを想い、誰かの心を救いたいと行動を起こす当事者のみなさんは、神戸が生んだ財産そのものです。

思いやりの心あふれる神戸のSOULです。

当事者のみなさんの想いや、前向きな取り組みを少しでも知っていただき、一人でも多くの人の心に届きますように。

■6月3日まで、クラウドファンディング

証言集の出版費用を集めるため、よろず相談室はクラウドファンディングに取り組んでいます。詳細はこちらをご覧ください。

(日本語) A-port 朝日新聞社

(日本語) A-port 朝日新聞社

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