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(日本語) 【子育て政策】 #保育園に入りたい ママパパたちが待機児童解消へ向け届け続ける当事者の声

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【子育て政策】 #保育園に入りたい ママパパたちが待機児童解消へ向け届け続ける当事者の声

「保育園に入りたい」と待機児童問題に対して訴えを続けてきた母親や父親が、今、子育て政策の議論の中心で大きな存在感を持ち始めています。

「一般の人がこの問題を社会問題だと理解し、『子どもは社会全体で育てよう』という、子育てに目を向ける文化を作らなければいけない」こう話すのは、「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」(以後、「めざす会」)代表の天野妙さん。東京都武蔵野市で3人のお子さんを育てる母親です。

この会は、今年2月に会の名前が決まったばかりの新しいグループ。「保育園に入れるのは就労をしている人だけ。就労に関係なく、希望している人みんなに受け皿がある状態を作りたい」という思いで名付けられました。

活動しているメンバーは、都内近郊の保活を経験した有志の母親・父親たち。仕事を続けるためにやっと入れたバスなどを乗り継いで45分かかる遠方の保育園に送迎し続けている母親、第2子が3年連続で認可保育園には入れず兄弟別園で送迎し続けた母親など、いつ終わるのか分からない保活に対して精神的な不安や負担を抱えているメンバーもいます。2017年12月現在で約10名がプロボノとして参画し、「できる人ができる範囲でできることをやる」のルールのもと、子育てや仕事の合間を縫って、思いを共有し、アイデアを出し合い、日々議論を続けています。

活動のモットーは、「怒ってもいいけど静かに怒ろう」。天野さんは、「怒りのパワーは長く続かず、課題解決にまでは至らない。怒りの気持ちを前向きに捉えて、改善に向けるようにしよう」と、会を始めるにあたって話し合ったと言います。

「めざす会」ではこれまで、自民党や民進党の待機児童対策プロジェクトチームの勉強会にも積極的に参加し自ら見聞を広げるとともに、SNSやイベント、署名活動を通して子育て当事者を含む一般の方からの声を集める活動も地道に続けてきました。集まった声は、陳情活動を通して、直接国会議員に届けています。

「話さないとわからないんだなと思った。」と天野さん。当事者がどんどん入れ替わり、継続的に陳情活動を行う人がいなかった子育て政策の分野。「めざす会」の母親・父親が思いを一つに知恵を出し合い、「対話」による活動によって届け続けた声は、今や政府も避けては通れないものとなっているのです。

#子育て政策おかしくないですか 保育園に入りたいママパパ達の署名を自民党本部に提出

政府が働き方改革や幼児教育の無償化を柱とした、生産性革命、人づくり革命を推進しようと動いている中、そうした政策の中身について議論し提言する自民党の「人生100年時代戦略本部」(本部長は岸田政調会長)を、2017年11月27日、「めざす会」のメンバーは署名を持って訪ねました。

この署名は、「めざす会」が中心となって、インターネット署名サイト「Change.org」を使い、「幼児教育・保育無償化は本当に必要な人から。圧倒的に足りていない保育の量と質の拡充を同時に!」と題し、保育園への全入化を優先するよう政府に対して求めるものです。11月8日から始めた署名は、署名提出の11月27日11時半時点で、3万1327筆が集まりました。

戦略本部を代表してこの署名を受け取ったのは、副本部長で自民党政調会長代理の片山さつき参議院議員。

片山議員は「自民党内では全入化か無償化かどちらかを選ぶという議論はしていない。32万人の受け皿についても、今後の様子によっては当然増えてくる可能性はある。ただし、保育園を作っても実は入園する人が少なかったとなっては困る。地域の状況に合わせた施策が必要で、本来は自治体が情報を集め取り組むべき課題。皆さんは粘り強く事実を積み上げて、政治を動かすために声をあげ続けてください。そのお手伝いはします」と語り、今後の議論に活かしていく方針を語りました。

また、厚生労働省子ども家庭局保育課の唐沢裕之企画官は「待機児童の改善に向けた取り組みはこれまで継続的に続けてきた。待機児童の受け皿32万人分という数字もこれまでの実績を見ながら独自に算出した数字。毎年自治体からの聞き取りなどをもとにさらなる充実を続けてきた」と語りました。

「(子育て政策に対する政府の動きを)パフォーマンスで終わらさず、実のある結果を導くために、野党の力や有権者の力が大切。ここから市民がちゃんと、『政策が実行されているか』、『中身がどういうものなか』をウォッチしていかないといけない。中身が実のあるものなのかを確認しながら、違う方向に行きそうになったら『違うよ!』と私たち有権者が全力で阻止していきたい」と天野さん。

次世代の母親・父親のために。子どもたちのために。「めざす会」の母親・父親たちは歩みを続けます。



【衆院選2017】 #子育て政策聞いてみた ママパパたちが各党公約比較で気がついた「穴」

衆院選の投開票日まで残り6日と迫った今週月曜日(10月16日)、首都圏で活動する子育て中の父親や母親でつくるグループ「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」のメンバーが座談会を行ないました。

目的は、各政党や候補者たちが掲げる「子育て政策」の中身について検証。本当に当事者たちが必要としている政策を打ち出しているかをチェックしました。与党を中心に、今回の選挙では0歳〜5歳児の教育の無償化などが争点の一つとしてあげられていますが、メンバーたちからは「幼児教育無償化」よりも「待機児童解消」を徹底して欲しいという要望が相次いぎました。

実は、メンバーたちは今、Twitterのアンケート機能を使って「 #子育て政策聞いてみた 」というハッシュタグの呼びかけとともに、子育て政策について有権者が何を望んでいるのかを調査しています。

質問は9つ。自分の住む地域に待機児童がいるか、保育の質を上げるのにはどのような制度が必要か、子育て支援に当てる財源として適当なものは何かなど、4つの選択肢を設けて、有権者の希望を可視化しようとアクションを続けています。これまでに1アンケートにつき、多いもので5,000票近くが集まっており、関心の高さをうかがわせています。

選挙期間中、アンケートにはTwitterを通じて誰でも投票が行えます。グループではこのアンケート結果への参加を各候補者に対しても求めており、草の根的にTwitterなどを通じて参加を呼びかけています。是非、ツイッターのハッシュタグ「 #子育て政策聞いてみた」から参加をしてみてください。

https://twitter.com/hoikuenhairitai

この記事では、座談会の様子をお伝えします。


一同)
よろしくお願いします。

堀)
最初にみなさん、簡単に自己紹介と、今回の選挙戦で気になっている点を教えてください。

天野)
天野妙です。9歳、5歳、1歳の3人の女の子の母親です。要介護2の母親の介護もしており、ダブルケア中です。 各党が、耳に優しい「幼児教育無償化」ということをおっしゃっているのですが、その前に「待機児童」対策はどこに行っちゃったかなというのが気になっています。

吉川)
吉川徳明です。私は現在ヤフー株式会社で、妻も新聞社で働きながら、3歳と0歳の娘を育てています。今の仕事に就く前は公務員で、深夜残業が非常に多く、なかなか子育てをしながら働く、共働きを続けるのが難しいと思っていたのですが、転職して柔軟な働き方ができる環境の元で、今子育てをしながら仕事も続けられています。私としては、社会的に一番優先順位が高いのは、保育のサービスの供給が足りていないというところだと思っています。もちろん、経済的な負担を解消するために当然「幼児教育無償化」ということも出てくるとは思いますが、優先的に解決すべきはまず、足りない保育のサービスをどう社会で出していくかということだと思っています。そのためには当然経済的な裏付けが必要になってきますので、各党その経済的な裏付けをどのように準備していこうとしているのかについて注目しています。

末永)
末永恵理です。今3歳の娘がいます。私は基本的には主婦なのですが、「乳幼児液体ミルクプロジェクト」という市民活動もしながら、子どもを保育園に預けています。今は働いていないのですが、女性が子どもを産んでも働きやすい環境を整えていくような政策を進めてほしいなと思っています。

中井)
中井いずみです。7歳と、もうすぐ4歳になる息子2人の母親です。上の子は認可保育園に1歳児から入れたんですけど、2人目がずっと入れなくて。上の子が今年小学校に入学するまで、ずっと兄弟別園の送迎をしていました。3歳になったら入れるかなと思ったのですが、それもなかなか入れず。いわゆる「3歳の壁」に激突して敗れています(※1)。選挙前になると必ずどこの政党さんもどの議員さんも、「待機児童問題が重要政策だ」と口を揃えて言うのですが、実際にどこまでその方が理解しているのか。保育園を「やむを得ず家庭を支えるために共働きをしている家庭の子が行くかわいそうなところだ」という価値観を持っている方であれば、政策にも実が出てこないのかなと思うので、なるべく議員さん一人ひとりがどう考えているのかを見ていきたいと思います。

  -(※1)待機児童対策として0~2歳児向けの小規模保育施設が増えた結果、卒園後3歳以降の預け先が確保できない状況

Rさん)
私は待機児童数ワーストワンと言われる世田谷で7歳、5歳、2歳の3人の子どもを育てている父親です。総合職でフルタイム勤務の妻と一緒に育てているのですが、なかなか保育所に入るのが大変で。一人目の時は認可を全部落ちると言う経験をしたこともあり、この問題をなんとかなくしていきたいなと思っています。圧倒的に保育所に入りづらい状況があります。首都圏はもちろんなのですが、全国で見ても、北海道だったり沖縄だったりというところも待機児童が多いというデータを見てきて、私たちだけじゃないな、悩んでる方もたくさんいるなと感じています。なので、その辺りを何とか候補者の方にも考えていただきたいなというのはもちろんあります。あと、実際に男性として働きながら子育てをする、そのしづらさを普段から感じているので、働き方改革含めて男性が育休を取りやすく、子育てに入りやすくするための政策にも注目しています。


「幼児教育無償化」のキャッチフレーズの中、「待機児童」はどこへ?

堀)
今日ぜひ、今までで揃っている公約や、各候補者や党首たちの訴えをどう評価しているのかというのを、座談会形式でお話ししていただければと思います。まず、公約の中で一番気になっている点はどんなところですか?

天野)
意外と「待機児童」という言葉を探すとあまり出てこなくて。「幼児教育無償化」ばかりに論点が言っている気がして。

堀)
そうですね。今回の選挙で「幼児教育無償化」が一つの大きなキャッチフレーズになっていて、特に与党は掲げていますよね。そのあたりは、まさに子育て真っ最中のみなさんの評価はどう評価されていますか?

末永)
私が住んでいる横浜市では、待機児童数は2人とすごく少ないのですが、「潜在的な待機児童数」まで入れると3,000人レベルまでいると言われています(※2)。周りにも保育園に入れていない人がいっぱいいる中で、「幼児教育無償化」と言われても。払える人は払っているので、そこを無償化する意味はあるのかなと疑問を感じています。

  -(※2)平成 29 年4月1日現在の保育所等利用待機児童数は2人となった。また、平成 29 年4月1日現在の横浜市での保育所等利用申請者数は過去最大の65,144人。保育所等の利用児童数は 61,885人。希望どおりの保育所等を利用できていない方が 3,259人おり、昨年同時期と比較して142人増。実質、「潜在的な待機児童数」3,259人。(平成29年4月1日現在の保育所等利用待機児童数について 横浜市こども青少年少年局)

吉川)
保育園に預けるお金を、もちろん負担に感じている世帯はあると思うんですけど、全ての人たちがそれほど負担に感じているわけではないと思っています。実際にいくつかの新聞記事などでその負担額は出ていますが、必ずしも平均で見ても大きい額ではない(※3)。保育園が足りていない状態で無償化すると、さらに需要は増えるわけで。供給が需要に追いついていない中で、さらに需要を増やして待機児童を増やすという方向に持っていくよりは、まずは実際に保育園を供給するための人材や土地への費用をどう確保するのかというところの政策が大事かなと思っています。無償化というのは、もちろん個人としてはありがたい面もあるのですが、社会全体のことを考えると優先順位は低いかなと思います。

  -(※3)世帯の児童1人あたり月額保育料をみると、「2万円以上3万円未満」が 31.9%と 最も多く、次いで「1万円以上2万円未満」が23.6%となっている。1世帯における児童1人あたりの保育料(平均値)は20,491 円。(「世帯の児童1人あたり月額保育料」 平成24年 地域児童福祉事業等調査 厚生労働省)

堀)
今一番やって欲しいことは何ですか?

天野)
今はやっぱり、「(保育園に)入れない人の受け皿」。今(待機児童数が)約2万6千人と厚生労働省が発表していますが、それが本当に2万6千人なのかなというところです(※4)。

  -(※4)待機児童数は26,081人(「保育所等関連状況取りまとめ(平成 29 年4月1日)」 厚生労働省)

末永)
横浜の「潜在的な待機児童数」約3,000人は、きっとその中に入っていないんですよね。

中井)
今回の「幼児教育無償化」は3歳から5歳までの幼児教育のことを言っているので、おそらく3歳以上は保育園か幼稚園に入れているという前提で話をされているというところがそもそも違うかなと思っていて(※5)。「3歳の壁」というところに着目してみると、2歳から3歳に上がる時に保育園がないから止むを得ずフルタイムの仕事をやめて幼稚園に預けているという世帯が、私の身近なところにもかなりいます。その人たちは、本当はフルタイムの仕事を続けたかったわけだから、保育園をまず整備してもらって、その先に無償化があるなら分かると思うんです。無償化自体は誰もがいつかはそうであってほしいと思うのですが、順番がまず違うかなと思います。

  -(※5)「2020年度までに、3歳から5歳までのすべての子供たちの幼稚園・保育園の費用を無償化します。」(衆議院選挙公約 自民党)

堀)
ご自身の状況はいかがですか?

中井)
来年は認可保育園は諦めようかなと思っています。2駅以上先の幼稚園に入れようかと。入れるか分からないですけど、これから申し込みは。預かり保育も5時くらいまででお迎えの時間が間に合わないので、外部のサービスを利用することも考えています。例えば、ベビーシッターやファミリーサポートで送迎を頼んだりしながら。正直、金額はかなりかさむと思うのですが、それでも残り2年間、小学校に入るまでの環境を整えてあげたいなという気持ちがあるので。さらに感じているのは、子どもが小さい時に一度職を失ったり、キャリアを一旦辞めて切ってしまったりということが、どれほどその後の再就職へのハードルが高いのかというのを、なかなか政治家さんが考えてくれないなと感じています。

末永)
私がまさにそうで。不妊治療のために会社を辞めて家庭に入りました。子どもが生まれたらまた再就職したいなと思い就職活動も行いました。でも、面接で聞かれるのは、「お子さんは誰が迎えに行くんですか?」「残業になったら誰が迎えに行けますか?」「病気になったら誰が見れますか?」ばかり。仕事の話は全然聞かれなくて。「残業はできません」と言うとどこも取ってくれませんでした。出来れば正社員で職を探したかったのですが。まだまだ、「女性の復職」というのは正社員が育休をとって復帰するためのものというところが大きくて、再就職となるとまた一段と厳しい。

堀)
不可逆的なんですね。

末永)
一度やめたら戻れないと思っておいた方がいい。

天野)
再チャレンジできない仕組みになっていますよね。

堀)
残り1週間ですけど、みなさんの方から声を発信して、各候補者なり政党なりに、「もっとこれ目を向けてよ」という機運を作っていきたいですよね。今「#子育て政策聞いてみたい」のハッシュタグで政策アンケートをされていますが、それぞれの設問を選んだ理由や、どういう風に候補者たちに考えてもらいたいのかということを教えてください。


設問1、お住いの地域に「待機児童問題」はありますか?

天野)
「めっちゃある」と答えたのが50%、「多少あるかも」が20%という結果でした(2017年10月16日時点)。なぜこの設問を最初に聞いたかというと、社会の課題として「待機児童問題」を認識しているか確認したかったからです。私の中では、意外と「ある」という風に認識してくれているのかなと思いました。

堀)
皆さんいかがですか?これをやはり一番最初に聞きたかった?

Rさん)
私たちは2月にも「#保育園に入りたい」のハッシュタグで情報を集めていたのですが、「待機児童ゼロ」や「待機児童はほとんどない」と言われている地域からも声が届くんです。札幌市で妻に偽装離婚を突きつけられたとか、浜松市で兄弟なのに別園だとか。まずはそれがちゃんと認識としてあるのかなということを有権者にも聞きたかったですし、候補者の方にも「自分の自治体には待機児童問題はない」と思っている人もいるかもしれない。そこをはっきりしたいなと思って。

天野)
「自分の選挙区では待機児童問題はない」という議員さんもいますよね。

中井)
「うちにはいませんよ」って言われたことがあります。でも、実際にその選挙区の数字を見ると、そうではない。政治家さん自身も認識していない。

堀)
これは、候補者の認識知りたいですよね。

中井)
それこそ、何人いると思いますか?と具体的な人数を聞いてみたいです。

堀)
伺っていると、当事者の感覚として、自分たちの問題が知られていないんじゃないか、まだ実感を持ってもらえていないんじゃないか、という危機感があるということでしょうか?

天野)
そうですね。ロビーイングなどで政治家の皆さんと話していると、「東京だけの問題ですよね」と必ず最初に言われます。でも、その方の選挙区を聞くと、実際に待機児童がいるわけで。

末永)
政治家の皆さんって、待機児童について知りたいと思った時に役所の方にレクチャーを受けると思うんですよ。一般のお母さんって政治家の方とお話をする機会がなかなかないと思うので、役所の話だけ聞くと、例えば横浜であれば待機児童数は2人という数字しか知ることができない。「潜在的な待機児童」約3,000人のお母さんと接触する機会がゼロだと「2人」という頭になってしまう。子育て中って忙しいので、この声がママ友の中にしか留まらないんです。

Rさん)
これはもっと深刻で。「待機児童」と「潜在的な待機児童」とがあって、いずれも自治体に申し込みをした人しかカウントされない。保育園に入れないと分かって大変な書類なんか書きたくないという人が結構な割合いて。政府が約32万人分の保育の受け皿を用意すれば「待機児童問題」がなくなるよと言っているところを(※6)、先日出た野村総研のレポートでは、88.6万人だと(※7)。「待機児童問題」を解消して無償化しますと言っているんですが、解消できるという前提がそもそも違うんじゃないかなと思います。

  -(※6)平成30年度から平成34年度末までの5年間で女性就業率80%に対応できる役32万人分の受け皿整備(「子育て安心プラン」について 平成29年6月22日 厚生労働省)
  -(※7)2020年時点で女性就業率の政府目標(25歳〜44歳の女性就業率77%)を達成するために、追加で整備が必要な保育の受け皿は88.6万人分と推計(「政府の女性就業率目標を達成するためにはどの程度の保育の受け皿が必要か」 2017年5月29日 野村総合研究所)

末永)
私も無職の状態で保育園を申し込んでいるので、役所に相談に行くと、「求職活動のために保育園に入る場合、ポイントが低くて認可は無理ですね」と言われ申し込みませんでした。潜在の潜在です。運よく無認可保育園には入れました。本当は、認可保育園に入ることができる選択肢があれば入りたかったのですが、役所の相談では「申し込んでくれるな」という感じだったんですよね。なので、そういう人がたくさんいると思います。

天野)
私たちのツイッターでのアンケートでも、3人に1人が「保育園に入りたいけど申し込みをしていない」と答えていました。

中井)
申請書類を全部書いて、会社に就労証明を出してもらって、平日に窓口に持っていかなきゃいけないという苦労を、絶対に入れないことを分かっていて、どれだけの人がしてくれるかということですよね。


設問2、「幼児教育無償化」「待機児童解消」財源として有効なのは?

天野)
これは意外な結果でした。歳出の効率化がなんと6割という結果(2017年10月16日時点)。無駄を省けと。みんな出したくないってことなのかな?

末永)
誰から見て無駄かということですよね。当事者にとっては無駄じゃないので。富裕層の人は「働きもしないのに生活保護はどうなのか」と思う人もいるかもしれない。「道路などの無駄なものを作らなくていい」という人もいるかもしれない。でも、当事者からすると全然無駄じゃないから、その応酬で終わっちゃいますよね。効率化できるのって、本当は少ないんじゃないかなと思いますね。

天野)
厚生労働省が「歳出の増加要因」についての資料を出しているのですが、公共事業は今、割合としてほとんどないんですよ(※8,9)。

  -(※8)平成28年度の歳出の増加要因は、社会保障関係費が21.0%、公共事業関係費が0.6%となっている(「普通国債残高の増加要因」 日本の財政を考える 財務省)
  -(※9)平成29年度一般会計歳出総額における公共事業の割合は6.1%(平成29年度予算のポイント 財務省)

堀)
公共事業はかなり絞られてきましたよね。逆に言うと、国土交通省は災害対策でもっと予算を出して欲しいと言ってたりもしますね。

末永)
吉川さんが元公務員で、公務員の建物とかオフィスって、すごく節約しているんだなというのがありありと見えて。最寄りの区役所も裏紙を使っているんだなとか。色々削減削減で工夫をしてやっていて。そんなに無駄ってないのかもしれないですよね。

堀)
期待しているほど、歳出削減をしても財源は生まれないんじゃないかということもあるってことですよね。でも、アンケートの結果は、歳出の効率化を求める声が多い。政党でいうと、維新の会や希望の党が、「増税前に身を切る改革を」と言っていますよね。皆さんとしては、どういうところから財源が引っ張ってこれると思いますか?

末永)
私はまず、消費税。10%に上げるという話がのびのびになっているので、消費税をまず上げて、そこから「子どものための予算はこれだけね」ときっちり持ってきた方が確実なのかなと思っています。

天野)
それだけでは足りない気がしていて。徴収の仕組みとして、「こども保険」はおもしろいなと思っていて。ぜひチャレンジして欲しいと期待はしていますね。

  -(※10)「こども保険」として、まずは保険料率を0.1%上乗せし、医療介護の給付改革を徹底的に進めつつ、将来的には保険料を0.5%に拡大していくプラン。幼児教育・保育の無償化を目指す。(「こども保険」の導入 ~世代間公平のための新たなフレームワークの構築~ 平成29年3月 2020年以降の経済財政構想小委員会)

中井)
私も、こども保険のような新しい仕組みはいいなと思います。どうしても、議員は給料をもらいすぎだとか、議員数を減らせと言っているけれど、日本は決して国会議員の数が多すぎる国ではない(※11)。だから、そういうところではなくて、新たな形でできればいいのかなと思っていて。ただ、「こども保険」の使い道は「幼児教育無償化」なので、「待機児童解消」にどれくらい割いてくれるかというところを色々考えてもらいたいなと思います。ただ、まず財源を取りに行くという姿勢は支持できるので、子どものために新たな財源を作るという方向では応援したいなと思います。

  -(※11)日本の人口100万人あたりの国会議員数(2016年8月末時点)は、5.66人。39カ国ある100万人未満の国を除いた154カ国中、日本は135位(「日本の国会議員数、世界で何番目? 世界の国会議員数を比べてみた」 2016年9月4日 THE PAGE)

堀)
歳出削減や財源確保に関して、それくらいシビアに向き合っている政党はありましたか?

Rさん)
財源は別として、こうあるべきだということは語っていただいていますが、じゃあ実際にそれはどこから出すのかという話は、皆さん語っていないですよね。

堀)
そうなんですよ。ニュースで伝えていても、「あれ?これって財源はどこから?」と言っても出てこないんですよね。逆に、歳出の効率化を図っていることを掲げる候補者の皆さんは、確かに有権者の思いとマッチしているのかもしれませんね。でも、予算はみんな必要としているので、奪い合いでもありますよね。

Rさん)
この10年で予算が増えたのは社会保障。消費税上げてもまたこの社会保障の中で高齢者と子育て世代の戦いになってしまうのでは。

吉川)
結局、医療とか介護とか、人の生活に直結する話なので、いいとこ取りができない。確かに、立場の違いで対立を激化させるのは非常に良くないと思うんですけど、ただ。美味しい話だけで解決するのではなくて、少し誰かに何かを諦めてもらうという調整を社会的にやっていかないとなかなか捻出できないのかなと思います。そういう難しい議論を私たちとしてはやっていかないといけないと思うんです。あと私は、先ほど選択肢にはなかったですけど、やっぱり保育園を利用する人からちゃんとお金は取った方がいいと思っているんですね。都内でしっかり稼いでいて、自分のキャリアを続けたいから高いお金は払っても保育サービスを受けたいという人はそれなりの数いるはず。負担できる人、負担をする意思がある人からは、私はもっと保育園を利用するにあたって、お金を取ってもいいかなと思っています。


設問4、父親の家事・育児参画

天野)
これは結果がばらけましたね(2017年10月16日時点)。

堀)
男の産休というのが1番多いんですね。

天野)
分かりやすい言葉なのかもしれないですね。逆に、「パパ・クオータ制」が分かりにくいのかもしれません。

堀)
「パパ・クオータ制」について改めて説明していただけますか?

Rさん)
「パパ・クオータ制」は、北欧を中心に展開されています。育休を女性が取るだけじゃなくて、その一部をパパの方にも割り当てていこうという制度です。ノルウェーの場合、育休を最長で54週間取得でき、うち6週間は父親のみが取得可能になっています。父親が取らなければ権利は消滅。育休中の手当は、44週間までは出産前給料の100%が支給されます。

堀)
設問を見ると、男性の育休や産休の取得方法にも様々な手法があるんですね。

Rさん)
はい。2つ目の設問の「男性育休の公的給付率向上」は、男性の育休の給付率をあげようというものです。お隣の韓国では、日本と同じく少子高齢化の代表国となっており、最近までは日本と同じレベルで男性の育休の取得率は低かったんです。しかし近年、1人の子どもに対して両親が順番に育児休業を取得した場合、2人目の育児休業時の最初の3ヶ月については給与が100%支給されるようにしました。結果、年1.5倍のペースで男性の育休取得率が増えています。

また、4つ目の設問の「男の産休(配偶者出産・育児参加)制度化」は、フランスで2週間で男を父親にする仕組みとして知られています。3日間の出産有給休暇と、11日連続の「子どもの受け入れ及び父親休暇」の2つの休暇制度。父親休暇は無給だが、国の社会保険からから所得補償があり収入は減ることはありません。実際に2週間、生まれたばかりの子どもを家でみて、父親の自覚を芽生えさせていこうという制度ですね。フランスではもともと、年に1、2週間バカンスを取るという慣習があるので、2週間くらいであれば簡単に取ることができるのですが、日本だとこの2週間でも色々ハードルあるのかもしれません。

堀)
各党、パパ達の方に向けての政策はいかがですか?

Rさん)
私はそこを注目して見てたんですけど、書いていませんでした。自民党の公約には「イクメン」・「イクボス」の政策が入っていましたが、この制度について具体的に書かれているところはなさそうです(※12)。

  -(※12)「家事や子育ては女性が担うべきとする古い意識や風土を 改め、「イクメン」や、妊娠・出産した本人やその配偶者の働 き方を適切に管理する「イクボス」も含め、男性の意識改革 と職場風土の改革を進めます。男性の育児休暇の取得及び家事・育児への参画の促進に取り組みます。」(衆議院選挙公約 自民党)

堀)
これを浸透させていくためにはどういうことが必要なんでしょうね?

末永)
会社で義務化するのが、一番労働者としては取りやすいかな。

Rさん)
企業で男性の育休取得率が高いところは、もう義務化されているところが多いです。ただ、5日間だけというと、「意味ないんじゃないか」という声が、特に女性からよく聞こえてくるんです。私は、有給消化のいわゆる「隠れ育休」を含め、第2子で11日、第3子で19日の育休を取得しましたが、5日であってもその時に「感じる」ことが重要かなと。会社での育休の取得者数が増えてくると取りやすさが全然変わってくる。そういう風土を作る上でも、まず数日でも初めてみるのはどうかなと思いますね。


設問5、保育の質の拡充に向けた「子ども・子育て政策」

堀)
どうしてこういう選択肢を選んだのですか?

天野)
「保育の質」というと、言葉の定義が難しくて。私は、「保育の質」そのものが、「保育士の質」だと思っていて。「保育士の質」をどうしていくかというところにフォーカスを当てたという設問です。

堀)
見てみると多いのは(2017年10月16日時点)、保育士と児童数の比率の見直しという、需要と供給側のバランスですね。

Rさん)
実際にツイッターで保育士の方からの書き込みもありました。「保育園で働き始めて数日で辞めてしまいました。この保育士の少ない状況で子どもを見ていて安全を確保できる自信がありません。無理だと思って辞めました」と。これでもし事故を起こしたらすごい取り上げられ方をして、責任も重大。給与だけの問題じゃないんだろうなと。人数の見直しも大事だなと思いました。

天野)
小規模認可だと、児童の数も少ないんだけど、保育士の数もすごく少なくて。1人休んだ時に代替要員をすぐに派遣できるかというとそうではない。そうすると、欠員がいるまま運営をしないといけないという状況が生まれるので。対児童数の法廷の整備のところももちろんですが、人材を派遣できるようなサービスができないと、対児童数の問題は根が深いんじゃないかなと思いますね。

堀)
「保育サポーター制度の導入」というのはどういう制度のことを指しているのですか?

天野)
これは、おおさか維新の会の制度です。待機児童が多い地域に限り特例措置として、保育士資格は持たないが、保育に関する知識と経験を持つ「保育サポーター」を認定し配置することで、保育士不足が原因によって生じる待機児童の問題解消を目指す政策案です(※13)。

  -(※13)(“今すぐ”待機児童「ゼロ」作戦 平成28年3月17日 おおさか維新の会)

堀)
ベビーシッターような形ですかね?その方も施設に入ってきてもらってということですね。

天野)
はい。しかし、実際に事業者が反対していて。というのも、無資格者が増えてしまうと、給与の安い無資格者に依存しがちになる。そうなると処遇改善が進まないよねということで。制度としてきちんと労働環境を見直していかないと非正規のような状態になってしまう。

堀)
おおさか維新の会の「保育サポーター」は、どれくらいまでのサポートを考えているのでしょうか?

中井)
結局、資格を持った保育士と同じことをさせることになると思います。例えば会社でも、派遣の方と正社員の人が全く違う給料なのに、同じ仕事と同じ責任を負わされて。うまく線引きできるのかなと疑問に思います。普段から、物理的な事務処理が負担になっているなというのは先生方を見てすごく感じています。こんなに頑張ってノート書かなくていいのにという時もあって。親からしてみるとそれがあるとすごく安心なのですが、その時間をもっと保育に費やしたいと思っている先生も本当はいたりして。子どものための保育なのか、親を喜ばせたい、安心させるための保育なのか。

吉川)
そうせざるを得ない状況に、何かある度に批判にさらされて追い込まれていたという経緯があるんだろうなと。運営側としたら、保育士さんにそこまで安心して運営できないという現状になっているんだろうなと思います。

天野)
私は、「保育士の性犯罪歴のスクリーニング導入」についても気になっています。イギリスにはDBS(Disclosure and Barring Service)という、小児性愛の性犯罪歴がある人を保育士として採用する際にチェックできるデータベースが存在していて。日本にはないので、いろんなところで男性保育士さんが批判の目に晒されているというところがあって。私は子どもを男性保育士さんに受け持ってもらったことがあるのですが、すごく良かったので、男性保育士さんが好奇の目で見られているというのはすごく忍びないし、もっと男性保育士の皆さんに業界の中に入ってほしいなと思っています。太鼓判を押すという意味も含めて、DBSの導入は検討してほしいなと期待をしています。

堀)
政策の中にはありますか?

天野)
一言もないのですが、アンケートによると15%ですがニーズがあるということを鑑みると(2017年10月16日時点)、今後検討してほしいなと期待しています。

堀)
日本はそのあたりが緩いから、もっと追跡したり、地域で情報を共有できるようにした方がいいですよね。


数のパワーで、立候補者に声を届けたい

堀)
これだけ話しても尽くせないほど、掘れば掘るほど、問題も山積。一方で、実は論じられてないけど、みんな知らないけど、こういう解決策とがあるんだよということがたくさんある。しかも、歳出一つ取ってもじっくり吟味しないといけない。実を言うと、こういう大事な議論をする時期なのでしょうね。最後に改めて、「#子育て政策きいてみた」で呼びかけを続けていますが、有権者、候補者の皆さんにそれぞれ呼びかけをお願いします。

天野)
有権者の皆さんには、ぜひツイッターの全9問のアンケートに一つひとつ答えていただけたらと思います。全部で3分くらいで答えられます。

堀)
どうして答えた方がいいんですか?

天野)
声をまとめることで、立候補者、当選した人にも届くでしょう。政策の場にも響くでしょう。数はパワーになるので、ぜひ数を集めたいと思います。

堀)
立候補者には?

天野)
立候補者のみなさんには、ツイッター上で「自分は何番に答えたよ」とシェアしていただけたらと思います。有権者に自分の政策がこういうものだよということだと明示できると思いますので、選挙区内で子育て政策について論じていただく、争っていただくという形で、選挙の活動にもお役に立てるのではないかと思います。

堀)
どんな社会を作っていきたいですか?

天野)
子育てしやすい社会です。子供を社会全体が育てようという風土を作っていけたらと思います。


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