動物災害

命を守る「しっぽ村」を知ってほしい 犬猫保護シェルターの奮闘

神奈川県厚木市で運営を続ける「しっぽ村」の外観は、ごくふつうの民家と変わらない一戸建てに見えます。が、一歩中に入ると、そこには創意工夫が凝らされた、動物たちの命を守るための犬猫保護シェルターとしての空間が広がっています。

しっぽ村の施設は古民家を使い保護動物達が過ごしやすい環境を整えている

 以前は、神奈川県愛甲郡清川村に拠点を置いていた旧「しっぽ村」。しかし、令和元年の台風19号の際、土砂崩れなどの被害を受けて、犬猫保護シェルターとしての継続運営ができなくなってしまいました。被災後の撤収作業を終えたのち、多くの方々からの支援、応援を受けて、ここ厚木市内に移転、新シェルターを開設しました。旧シェルターに比べ、敷地内をより広々と生かすことができ、犬たちが走り回れるケンネルラン、日光がたっぷり入って明るい猫の為のお部屋、猫エイズや白血病などの感染症を患っている犬猫たちの為の特別エリアなどを備えています。

しっぽ村の動物たちを紹介してもらいながら、代表責任者の深津彰詞さんにお話を聞きました。
いま、クラウドファンディングで運営資金への協力を呼びかけている最中です。
https://a-port.asahi.com/projects/shippomura2020/

しっぽ村の深津彰詞さんは施設スタート当初から運営に関わってきた

堀:元々右が民家だったんですよね。改装するのに結構費用がかかったんじゃないですか?

深津:そうですね、ただ内装に関してはスタッフとボランティアさんでほぼ作り上げているんです。リフォーム業者さんにお願いするよりは費用も抑えらたのではないかと思います。

内装は、犬たち、猫たちが健康にのびのびと暮らせるよう、それぞれの習性を熟知したスタッフが、ほぼすべて手作りで創り上げました。

内装など施設の整備はボランティアの手によって行われた

室内に配置された犬型のクリップや、猫型のドアノブなど、動物たちを想う方々の愛がこもった空間であることがそのはしばしから伝わってきます。

伏し目がちにまぶたを瞬かせる、茶色の犬がブランケットにくるまれて暖まっています。

堀:この子は、もともとどういう状況で保護されてきたんですか?

深津:虐待まがいの事が行われていたんじゃないかなというのが、保護された方の当初のお話でした。こちらに来たばかりの頃は、そのことを彷彿とさせるような反応もよく見られました。たとえば、足下なら、履いている靴や足に直接噛みついたり。掃除をするのに、ブラシなどを持って入ると、棒状のものに対してだけ、ものすごく攻撃的になったりとかですね。僕もだいぶ、靴の上から齧られたりしました。それから、もう5年経ちますが、少しずつ信頼が築けてきたかなと思います。今では、よしよしとなでる感じで触ったりすることができるようになっています。

人への不信の念をすこしずつぬぐってあげられるよう、、深津さんたちが日々、コツコツと信頼を積み重ねていっています。

しっぽ村には、猫エイズウイルスに冒された猫たちだけの特別エリアがあります。口元に、ちょび髭のような印象的な模様をもつ猫、チャップリンもその中の一匹です。

しっぽ村で保護されている犬猫達
しっぽ村で保護されている犬猫達 病気や怪我の治療をここで受け療養

堀:この子はどういう状況で保護されたんですか?

深津:この子は県内だったんですが、外で暮らしていた子で。動物病院を経由して来たんです。顔の左側がすこしいびつになってしまっていますが、そこが、一回皮膚がやぶれてしまって、傷を縫った跡があるところですね。喧嘩なのか、怪我なのか分からないのですが、保護された方が病院に連れていかれて、そこで傷の処置を受けて、そこでの検査で感染症にかかっているということが発覚したんです。その方のすでに育てている他の猫ちゃんに感染してしまう恐れがあるから、ご自宅で飼うことが難しいので、それでしっぽ村にやって来た、という経緯ですね。

堀:もししっぽ村が無かったら、チャップリンはどうなっていたんでしょうか

深津:そうですね、外に戻るということはなかったと思いますが。それなりの行き先、一時的な保護先を見つけるのは、非常に困難だったんじゃないかと思います。

チャップリンは金色の目をくるくると回して、こちらを興味深げにうかがっている。

かなり痩せてしまっている白猫、のんたくんは、ドーム型の猫ハウスの中で眠っていた。

深津:この子は、半年前くらいから見かけなくなったって言っていた方がいらして。半年ぶりに見かけたら、もうかなり身体の状態が酷くて、ガリガリになって、弱ってしまっていたそうなんです。それで保護したいんだけれど、連れて行く場所がないと相談を受けて、じゃあしっぽ村に連れてきてください、と。先日来たばかりです。状態がよくないので、検査をしたら、白血病と猫エイズのダブルキャリアということで

天井近くのステップに、キジトラ白とキジトラの2匹の猫が仲良く丸まっている。

深津:左の子は、車のボンネットの中で保護されて、全身に大火傷を負っていた子なんです。相当な手術をして、その後ここにやってきた子なんです。今はようやく毛も生えそろって。

堀:そうなんですか、ここから見る分にはやけどをしていたなんてあまり想像できないぐらい、きれいですね。

深津:当初ここに来たときは、毛もまったくないような状況で、縫い傷ばっかりで。なんとか一命を取り留めた状況でした。

深津さんから、当時の写真を見せてもらいました。毛は焼け焦げて全身がほとんど丸裸、目を覆いたくなるような酷いやけどでした。こういった事故を少しでも減らすための取り組みも、しっぽ村では行われています。

深津さんが、かわいい猫のイラストが描かれたステッカーを見せてくれました。「猫バンバンステッカー」です。

深津:「猫バンバン」のステッカーです。冬場、猫が入ってしまうことがある自動車のボンネットをバンバン叩いて、猫がいるかいないかの確認を呼びかけるのが目的です。猫が中にいれば、そのバンバンって音で出ていくので、エンジンルームでの事故をふせげます。その啓発のために作ったステッカーです。ちょっとした気遣いで、助けられる命もあるということを知ってもらうために。三菱自動車さんに許可を貰いました。

私たちがほんの一瞬、ちいさな気遣いをすることで、助かる命があります。

日光がさんさんと降り注ぐ、猫たちの部屋に案内してもらいました。

深津:どうぞこのままお入りください

堀:明るい、自然光の入るいい部屋ですね!

深津:この部屋には1213頭の猫がいるんですが、隠れてたりする子もいるので

堀:よく見ると、あちらこちらから

小さく鳴きながら、深津さんに近寄ってくるサバトラの猫がいます。名前はプー太。

深津:11月に入れば、ここを一般の方にも公開する予定ですので、そうしたら里親さん募集も始める予定です。この子みたいに、人慣れしている子から譲渡が進むと思います。人を怖がらない子たちからですね。

堀:じゃあここで、猫を飼いたい、預かりたいって人たちが、猫を見ながら、触れ合うことができるんですね。

深津:はい。もちろん、「猫が欲しい」と来て頂いてもすぐに連れて帰って頂く事はできませんが、ある程度しっかりした環境が整っている方とか、飼っていくのに十分な能力をお持ちだと思われる方のところに譲渡していきます。

しっぽ村では、正式譲渡の前に必ずトライアル期間を設けています。急な譲渡で、「こんなはずではなかった」という、行き違いを防ぐためです。

深津:このプー太は、清川村にあった旧しっぽ村に、いつのまにかやってくるようになったんです。清川村の施設の外に捨てられていた子なんです。

なんにもあげてないよ、と後から寄ってきた猫に深津さんが優しく声をかけます。

堀:施設があるからこそ救われる命ですよね。

深津:はい、なんとか。この隣にもお部屋がひとつあるんですけど、そこもゆくゆくは猫の為のお部屋に改装して、使っていきたいと思っています。

堀:新型コロナウイルス流行下の状況で「ペットを飼いたい」と思われて、それから少し生活が落ち着いてきて、「もう、要らない」となる方もいたと聞いていますが、実際はどのような状況だったのでしょうか?

深津:はい、我々しっぽ村にも、保護受け入れの依頼は連日あります。そのような社会の責任ではないですが簡単に決断してペットを飼って、飼えなくなったら手放す、という安易な考えで、命をうけいれるというのは、すごく、あってはいけないことだと感じています。

最後に、深津さんに聞きました。

堀:深津さんにとって、命とは

深津:命とはですねすべての命を、自分自身の命と同じように尊重するべきだと思っています。僕もまだ生きたいですし、きっとここにいる彼らも、まだまだ生きて、幸せな暮らしをしたいと願っていると、思います。この「しっぽ村」を、次の世代にしっかりとつなぐまでは、まだまだ現役で続けていきます。

新しく生まれ変わった「しっぽ村」。命を守る、深津さんたちの奮闘は、今この時も絶え間なく続いています。

一般社団法人しっぽ村

一般社団法人しっぽ村

東日本大震災が発生した2011年、行き場 を失った犬猫への支援を通し、被災地を応援することを目的に活動を始めました。 翌年、神奈川県愛甲郡清川村に身寄りの...

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