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【新型コロナ】COCOAも活用 混雑予報開発の舞台裏をキーマンが解説 #NO3密情報

新型コロナウイルスの流行下で、世界は二回目の春を迎えました。日々のニュースで、毎日の感染者数が報じられない日はありません。感染の拡大と一時的な落ち着きが繰り返す中、何を基準に自分の行動を判断すればいいのか、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。

本日は、そんな不安がすこしやわらぐきっかけになるかもしれない記事をお届けします。お出かけ前にチェックする天気予報のように、目的地ごとの混雑状況をリアルタイムと予報でチェックすることが、しかも誰もが無料で活用できる「No!三密プロジェクト」(https://www.no-sanmitsu.org/)の構築を率いられた、坂村健先生にお話を伺いました。

堀:今日は、僕の番組TOKYOMX「モーニングFLAG」でも朝の時間、定期的にお伝えしている「No!3密情報」について、どのような取り組みで、どのような舞台裏があるのか、実際に技術を開発されてこられた、坂村先生にお越しいただいております。今日は色々お伺いしたいと思います。坂村先生、よろしくお願いいたします。

坂村:よろしくお願いいたします。

堀:坂村先生、今回やはりデータを活用して、わたしたちの行動をきちんと規範していく、この取り組みにどういったところに意義を見出されて、研究を重ねてこられましたか?

坂村:はい、やっと日本でもワクチンの接種が始まりつつありますが、残念ながらコロナウイルスは終息したわけではありません。いまだ注意をして、生活を続けていかなければならない、そのような位置に日本の状況はあると思います。そういった状況の中で、各個人が気をつけなければいけないことが色々とありまして、例えば密にならないとか、できる限り、人と人との接触を無くす、という事ですよね。感染されている方と会ったり接触するのはもちろんのこと、個人個人が感染しているかしていないかもわからないので、とにかく密にならない、このことに尽きると思います。人が密になっている場所には行かない、ということを個人個人が徹底すれば、少しは状況としてはよくなるんです。

坂村:苦しんでいらっしゃる皆様はいらっしゃいます。例えば、夜遅くまで騒がないなんてことは大事ですよね。飲食店の皆様もお店を早く締めなくてはならない状況であったり、そういった皆さんの犠牲の上に、たいへんなことも多くありますけれども、「密にならない」ということをみんなが気をつけることによって、今、幸いなことに日本の状況はニューヨークのような状況に比べれば、だいぶ一日当たりの感染者は少ない状況にあります。一日当たりの感染者は日本全国でも千人単位ですよね。ニューヨーク市だけでも一日当たり5000人規模の感染者がでています。ニューヨーク市だけでです。日本では各個人が気をつけた行動をとった結果、このような好ましい傾向が保たれているのではないかと思い、それを最新のICT技術、情報通信技術を使って発信を行っていくことによって、人々の行動する時の参考にしてもらいたかったんです。

わたくしどもが運営するINIAD(東洋大学情報連携学部)と、わたくしが所長を務めておりますUNLYRPユビキタス・ネットワーキング研究所)で、そういった研究開発をしていたんですね。そこで、研究成果がある程度出てきたので、これをひろく、世の中に広めて、皆さんのために役立ててもらいたい、という想いでこのプロジェクトをはじめました。

堀:実際にぼくがすごく先生に共感するのは、気は緩めてはいけない、とか、みんなで頑張りましょう、とか、そういったいうスローガンでみんなの行動を決めるのではなく、きちんとしたデータに基づいて、「今日はこのあたりに行くのはやめておこう」という判断をしたいんです。実際に先生方がこういった形で発表される前というのは、伝える立場の私たちも何を伝えるべきか、ということが分からなかったんです。

坂村:いいことを言ってくださるなとありがたく思います。私たちが研究開発したというものは「リアルタイム」。いま、どうなっているか。それと、私たちはもう何か月もデータを蓄積しているので、そこに色々な他の知見、データ分析だったり、AIも一部使っていますし、気象データ、イベントのデータなどを投入して、できる限り精度を上げているんです。「今どうなっているか」に加えて「これから先どうなっていくか」を、データ分析の見地から、できる限り、確率的にはありますが、予測も行いたいんです。それが分かれば、いまここにこのくらい人がいる、そしてもっと増える可能性がある、ということが分かれば、ここに行くのはちょっとやめておこうかな、という判断の指標になると思うんです。

堀:かなり具体的に、この時間帯、この場所、上がっています、下がっています、などということや、週末の予想の予測値が出ていますよね。

坂村:そうなんです。予測が非常に重要で、特別なイベントが行われることもありますからね。例えば雨が降った日は、人出が少ないとか。100%の予測は無理でも、だいたいの「傾向」がわかりますから。

堀:こちらに、オープンデータ・プラットフォームを図式にして説明したフリップがあります。このような多様多種のデータを、突合して、組み合わせて予想をされているんですね。私たちがお店でどんなものを、いつの時間に買っているかという情報を集めたPOSデータなども利用されているんですね。

坂村:POSデータはリアルタイムで追えるものではないのですが、傾向はやはり分かります。そういったものを色々と見て頂いて、ここに行くのはやめておこう、ここが混んでいないなら、こちらに行こう、といった判断がデータに基づいてできる、ということなんですね。

堀:そもそもどういった仕組みをつかっていらっしゃるのか、もう少し仕組みを教えて頂けますか?

坂村:今回メインで使っている非常に重要なデータのひとつは、厚生労働省が非常に注力している「新型コロナウイルス接触確認アプリ」。いわゆる「COCOA」と呼んでいるものです。

堀:COCOA」は私たちもよく番組でも伝えていますし、僕も実際にインストールしています。


坂村:
私たちは「COCOA」そのものを使っているわけではありません。ただ、「COCOA」を利用させてもらっています。どういう事かと申しますと、「COCOA」は、どういう人と会ったかということが、「COCOA」アプリを入れている人同士で記録することができるんです。「COCOA」アプリをスマホに入れている人同士が近づくと、お互いがお互いの情報をIDで記録できるようになっているんです。そのためにひとりひとりにIDが付与されるわけですが、「COCOA」のいいところは、BLEBluetooth low energy)という交信方法で、スマホ同士が交信できるところなんです。Bluetooth通信は、皆さんも音楽を聴かれたりするときに使われていると思いますが、非常に消費電力が高くて、比較的すぐ電源がなくなってしまって、当然、頻繁に充電しなければいけません。でもBLEBluetooth low energy)は、同じような規格ではあるのですが、送る情報の容量が少なく、普通のBluetoothに比べて、消費電力が非常に少ないんです。

だから、「COCOA」では少ない消費電力で2週間分の接触が継続して確認することができる。新型コロナウイルスの潜伏期間は一般的に2週間と言われていますから、その基準に準じているんです。ここで今、こうしている間にも、堀さんのスマホの番号を私のスマホが記録している。「COCOA」というアプリ自体は、その情報を記録して、もしも、我々のうちどちらかが感染してしまったら、サーバーに記録された情報をもとにして、「あなたは感染した人に、過去、会っていましたよ」というアラートを上げてくれるものです。ですが、私たちが「COCOA」のデータを使って測定しているのは、「この場所にCOCOAアプリを入れた人が何人集まっているのか」という事なんです。

堀:ちょうど、そのデータ収集のようすがわかる端末がありますね。ちょっと見せて頂いてもいいですか?わたしも先生も、周りのスタッフも「COCOA」をインストールしています。

堀:こちらですね。これ、番号が入れ替わったりしていますね。これはどういった事なんですか?

坂村:これは、個人のプライバシーを保護するために、ひとつのスマホに対してひとつの番号が振られているのではなく、この番号、ある時はまた別の番号、というように変わっていくんです。ずっと同じ番号で追跡しているわけではないんですよ。ハッシュという関数を使って、番号が一緒でなくても、コンピューターはちゃんと把握しているんです。

堀:これを街中でチェックしているんですね。

坂村:皆さんが「COCOA」をインストールして、こういう端末を街中に置いておくだけで、だいたいこの地域にどれくらい人が密になっているか、というデータの把握ができるんです。これを、私たちのINIADUNLのクラウドにどんどんデータを送るんです。BLEは、だいたい10メートル程度の範囲で計測しているんです。もっと広い範囲の計測がしたいと思えば、この監視用の端末の数を単純に増やしていけば可能になります。

堀:そうなんですね。僕、安心したんですよ。どうしても、新型コロナウイルスの話や、「COCOA」に関して、課題点や問題点、不具合にばかり報道が集中して、せっかくみんなで協力してやっていこうとしているものが、なにも利用されずデータが眠ったままになっていてしまったら、とても残念なことだなと。そのなかでも使えるものをどんどん使っていって、実際に研究者の方々がこんなふうにデータを活用・実践されているところがあるということは、もっともっと知られるべきだと思います。

坂村:ありがとうございます、もっと広めていって頂ければ私たちも有難いです。

堀:ちなみに、先ほども少しお話にも出ましたが、他の番組でも行われていたりする混雑情報案内の取り組みと、先生方のされている取り組みの一番の違いはなにか、もう一度端的に伺ってもいいですか?

坂村:他の方法と比べると、我々が運営している方法ではプライバシーが圧倒的に守られるということがまず最初の違いです。他の方法で多いのが、カメラで街中の様子をとらえて、AIを用いるなどして人数を数えるという方法がありますが、この方法では映像を撮影してしまっていますから、顔をとらえてしまっていますよね。映像の情報は公開しないと言っても、データは蓄積されて行ってしまう。我々の方式では暗号化されたBLEで、「COCOA」をインストールしている端末がいくつあるかというデータを蓄積していっているという事なので、プライバシー保護のレベルは非常に高いんです。

坂村:もうひとつ、カメラの設置の手間は非常に面倒です。我々のデータ収集には、皆様の「COCOA」インストールのほかは街中にこの端末を置いて置けばいいんです。他の方法では、携帯電話キャリアの基地局で、どの番号を持っている人がどこにいるかということは、携帯電話キャリアが計測しようと思えばできるわけです。しかし、個人の電話番号、これはもうプライバシーの塊ですよね。電話番号が分かってしまっているわけですから。そうしますと、その混雑情報データをだすのに、「リアルタイムに今、すぐに」という訳にはいかないですよね。データを処理しなければいけませんから。携帯電話キャリアだって個人情報でトラブルを起こすわけにはいきませんよね。そうしますとそのデータ処理にかかるコストもありますし、リアルタイムに情報を出すのも難しい。今の判断のためには、今この時の情報が必要です。リアルタイムの情報をやりとりしている、というのは我々のほかにはあまりないのではないのでしょうか。

堀:たしかに、昨日までの週末の人出の混雑状況を見てみましょう、かなり人出が「多かった」ですね、という紹介情報はよく見ることがありますが、先生方がされているように「今」を伝えられているものは非常に少ないですよね。そして明日、週末、こうなります、という予測を出していらっしゃる。

坂村:そうなんです。「今」が届けられることが、私たちの特色です。

堀:先生方のこの取り組みは、今を知って、自分たちの未来をきちんと自分で決められる仕組みのひとつを作られているという事ですよね。

坂村:また、ぼくらの仕組みは10メートルくらいのメッシュで行っているので場所の精度が高いのですが、カメラ監視などですと「だいたいこのあたり」という事しかわからないんです。

堀:そうですね、不特定多数の人がいる場所で、もっとこうした取り組みが広がるといいですよね。僕はこういう取り組みこそが、もっと多くの人に広まればいいなあと思って。公的資金もこういったところにもっと入ればいいのにと個人的には強く思っていますが、現状としてはこういった取り組みを継続していくのに、皆さんのご協力が必要だということなんです。そして一方で、先生にぜひお伺いしたいのは、本来のウイルス対策というのは、情報をきちんと補足、追跡、分析して、封じ込めの政策を投入する、というのがセオリーだと思います。しかし現状としては、追跡もなかなかできていないんだとか、検査そのものの数が絞られていて実態がよく把握できていないとか、変異種が見つかったけれども亡くなった方の行動経緯が把握できていない、なんていう風に、データがすごくおろそかになっているという点に、すごく大きな不安を感じるんですよね。韓国や台湾の対策政策では、ある程度匿名性を担保しながらも、データをある程度共有する取り組みを進めることができていますよね。日本でもそろそろ、そういった本丸の議論をはじめてもいいのではないか、という風に感じるのですが、いかがでしょうか?

坂村:まさにその通りで、やっと日本でも最近、データの重要性が認識されるようになってきたと感じています。

もっとデータドリブンというか、感情だけに頼るのではなくて、データを中心とした議論を行っていかなくてはいけないのではないか、という機運がやっと日本でも始まってきたのではないかと思います。ただ、その時に、データを取ってやっていく上で、私たちが気をつけているのは、なるべくプライバシーの問題を複雑にしたくありませんよね。日本の法制度も変えないといけない、等ね。他国の施策と比べて、なぜ同じことが日本でも出来ないのかといらだつ気持ちを持つ人がいるのもわかりますが、なかなか大変な状況でして、いい方向に変えていくためには、みんなが理解をしないといけないし、マインドの統一が必要ですよね。感情論が全面にでてしまいますと、なかなか議論は収れん、終息しなくなってしまいますよね。すこしずつでいいから、今よりも、データに基づいた科学的な議論をもとに行動するようにしていけたらと私も思っています。

堀:皆さんが、この「No!3密情報」をはじめとして、こうしたツールを、実際に自分の行動の基準として使われてみて、「やっぱり現状はそうなんだな、すっきりするな」と納得する体験を持って、広げてほしいですよね。僕はやはりより多くの皆さんに知ってほしいと思っています。そのためにメディアの役割も大きいと思っています。そして今回、クラウドファンディングも開始されましたよね。

坂村:クラウドファンディングを実施したのは、研究開発費を集めるためではないんです。今回は、私たちがやっていることを社会的に広めて、データ活用の価値をより認知してもらうためのお金を集めているんです。この端末の設置にも、やはり費用がかかりますし、我々のやっていることに興味を持っていただいて、人が密にならないような仕組みを、インフラとして作っていくことが重要であると、より多くの方に思っていただきたいんです。それに、今回のクラウドファンディングを行うことによって、幼稚園や病院など、公共的な場所に、端末設置の協力を頂けるような助けになると思うんです。

堀:本当に、データを待っている所はたくさんあると思うんです。

坂村:そうなんです、ぜひ興味を持って、理解していただいて、例えば、高齢者の方がいらっしゃる方がいる施設への設置など、そういった場所に端末をどんどん持ち込ませて頂くとか、そういったことに使わせて頂くお金を募っているんです。その結果、自分の頭で考えて、行動を起こしていく方が増えていって頂ければなと思っています。そのために、クラウドファンディングの資金を使うことができればと思っています。

堀:共感します。僕がメディアに身を投じた大きな理由の一つが、メディアは空気を作る装置じゃない、ファクトが重要だなと思ったからなんです。重要な報道を出す側だけじゃなくて、受け取る側が「これは重要だ」と感じる理解認識がある、相互の関係が必要だと思うんです。それでは最後に、先生方の研究のこれからの将来ビジョン、未来の話を、少し教えて頂けますか?

坂村:未来の話をしますと、残念なことに、今回の新型コロナウイルスの流行が終息したとしても、その後もパンデミックが出てくる可能性はもちろんあります。もちろん、医学も進歩して、対処方法も増えていきますが、やはり現象として、別のウイルスの流行が出てくる可能性があります。もしもそうなった時のために、密を避けるというインフラが完璧にできていれば、今よりも、どう行動したらよいか、ということが判断しやすいと思うんです。人が密になって、クラスターが起きてしまった、なんていうことを未然に防げるようになるでしょう。これをもっと広めておくということが大事です。それともうひとつ、そういう事が起きなかったとしても、街づくりをしていくときに、どこに人がどれくらい集まっていて、どこは人がいないか、ということを考えていくのは、都市計画の基本です。以前はストップウォッチのような機械を使って人が何人通るかを計測したりしていましたが、今はそういった事をするよりもIT技術を使う方が有効です。そういった将来の都市計画を作るためにも、こういった技術は重要だと思っています。災害の対策にも使うことができると思っていますので、この研究をさらに続けて行って、情報通信時代の、基本的なインフラとして使っていけるようにしていきたいと思っています。

堀:ありがとうございます、今お伺いしていて、ますます、「いま」を記録するデータが、きっと将来を変えていくんだなと思いました。もし「いま」のデータが蓄積されていなかったら、将来、振り返っても過去のデータがないということは、未来にとって本当に不幸なことですよね。だからいま、きちんと状況を把握していく、ひとりひとりの取り組みがとても大切だし、未来への現代人の責任として、本当に重要なことだと思いました。

坂村:ありがとうございます、私も今日ここへきて、堀さんとお話しして・・・力が尽きました(笑)

堀:出し切っていただきました。笑。

堀:皆さんからの支援をお待ちしています。資金自体の話というよりは、データの重要性をちゃんと知っていただいて、広めてくださるきっかけになればと思います。「No!三密プロジェクト」と検索すると出てくる専用サイト(https://www.no-sanmitsu.org/)のバナー(https://www.securite.jp/project/no-sanmitsu)からアクセスして、是非チェックをしてみてください。「みんなで作り共有する混雑状況データ活用プロジェクト」。「みんなで」というところが大きなポイントになっています。是非、コロナ下での市民生活の為、誰もが混雑状況を共有、活用できる環境を構築するために、ご参加ください。坂村先生、今日はありがとうございました。

坂村:ありがとうございました。

クラウドファンディングプロジェクト「みんなで作り共有する混雑状況データ活用プロジェクト」は、1500万円を目標金額とし、4月末日までの予定で活動中です。

 誰もが無料で混雑状況データを活用でき、それを自分自身の行動に反映していくことができる世界の為に、より多くの皆様に知っていただきたい活動です。過去は変えることができなくても、未来は、私たちの力で、いまより良い方向に変えていくことがきっとできます。ぜひ、このプロジェクトへの理解をきっかけにして頂ければと思います。

【了】

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