インターネットやスマートフォンがとても便利になって、わたしはいま「誰でも発信できる時代」「あらゆる情報にアクセスできる時代」を生きています。
ソーシャルメディアも使いこなすことで、情報も、人脈も、そして必要な資金も頑張って手に入れようとすれば手に入れられる可能性が広がりました。
とても便利な時代です。
でも、ふと立ち止まって考えてみると、事実だと思って心の中にしまっておいたものが時折、蜃気楼のように、そこにあるようでないような不確かなものに見えることがあるのです。
自分の中に蓄積されていった一つ一つの言葉を「それって本当?」「それってつまり何?」と噛み砕いてみると、実は、わかっていたようで本当はよく知らなかったことが沢山あることにも気がつきました。
”被災地ではまだ多くの人たちが困っている”
”格差が開いて、子どもの貧困が深刻だ”
”紛争地では罪ない市民たちが犠牲になっている”
テレビやスマホのタイムラインから流れてくる日々のニュースを眺めているのでイメージが湧きます。そうしたニュースに触れるたびに「何かしなくては」と、ざわざわとした気持ちになるのですが、結局、悲しくなったり、悔しくなったりしていつの間にか時間が経つことも少なくありません。
決して不真面目に見ていたつもりではないけれど、「被災地の多くの人たちって、誰?」や「子どもの貧困の貧困ってどんな状況?」「その紛争地って誰が何のために殺しあっているの?」と一々、自分に尋ね返してみると、答えが見つからなくてとてももどかしい気持ちになります。
そのもどかしさと向き合うことなく、日々のニュースをちょっとした読み物として消費してしまってきたのではないかと思うと自分の浅はかさに情けない気持ちになりました。
でも、そんなつもりではなかったのです。不真面目に茶化して見ていたわけでもないのです。
どうすれば、ニュースをただ消費するのではなく、何かを生み出すようなアクションに繋げられるのだろう。支援したり、発信したり、アイデアを考えたり、誰かと議論したり。消費ではなく、生産するのには何が必要なのだろう。
その答えにたどり着きたくて、少し立ち止まって考えてみました。
難しい問いでしたが、一つだけわかったことがあります。
被災地も、子どもも、紛争地も、主語として使う言葉としては、大きすぎるということです。
被災地は、と言っても場所は様々です。東日本大震災や原発事故後の状況を見ても、地域によって必要な支援は違います。
子どもも、紛争地もそう。
《大きな主語》は、何かを語っているようでいて実はイメージを伝えるような言葉ではないかということに気がつきました。
《大きな主語》の反対語は《小さな主語》。試しに被災地という言葉を小さくしてみると、初めてわたしは何かが見えてくるような気持ちになりました。
被災地 > 東北 > 福島 > 浜通り > 楢葉町 > 楢葉町の商店街 > 商店主の○○さん
商店主の○○さん、いまどうしているんだろう?
調べてみよう。
家はまだ仮住だけど、別の場所で店の再建を計画しているのか。
何が支援になるのだろう。
そうか。店が再開したら、会いにいってみよう。
《小さな主語》は、きっとアクションを生む。わたしのもやもやが晴れて、確信に変わった瞬間です。
小さな主語に満ち溢れたニュースがあってもいいはずだと思っています。
そして、その小さな主語をみんなが支え、アイデアを出し合い前進させるためのメディアがあってもいいはずだと思っています。
一つの種を、みんなで水をやり、肥料をやり、花を咲かせ、果実を実らせる、そんなメディアがあればと思い、わたしは「GARDEN」を仲間たちと共に立ち上げました。
種を探そうと思い様々な現場を見つめてみると、わたしよりも行動力があって、想いもあって、勇気や知恵もあって、すでに種を大切に育てようと奮闘している人たちがいることがよくわかりました。
NPOやNGO、ボランティアグループを作って、社会問題と向き合い、困っている人たちの一助になろうと奮闘している人たちです。限られた資金、限られた人員で、社会を支えようと踏ん張っている姿に、わたしは胸を打たれました。
知らなかった現場、知らなかった社会問題、知らなかった努力、知らなかった解決のためのアイデア。小さな主語に満ちた現場の奮闘です。
GARDENはそうした、公益事業者の皆さんの発信を支援するプロジェクトです。
必要な資金を寄付する事で種を育てる、「寄付したい」水差しのマーク。
発信し情報を多くの人に広める事で種を育てる、「取材したい」カメラマーク。
ボランティアやイベント事に参加する事で種を育てる、「参加したい」花びらのマーク。
そして、気持ちを届ける事で種を育てる、「共感する」お日様のマークの4つを用意しました。
すでに多くの人に伝える力を持っている人たちに協力を仰ぎ、「GARDENジャーナリスト」として発信を支援する人たちもいます。
一人一人のできる事で参加し、小さな種を守り育てるジャーナリズムを提案できたらと思っています。
みなさん、ぜひ力を貸してください。宜しくお願いします!
桜の花が満開の季節に。
GARDENメンバーより。